2017年12月29日

居抜き物件で開業(改装)するときの工事費用は? 工事のポイントも解説

居ぬき物件工事の費用についてご紹介しています。事業を開業する際、居抜き物件を選択することでどんなメリットがあるのでしょうか。ここでは居抜き物件を選ぶメリット・デメリットに加え、抑えられえる費用や注意点まで掲載していますので、ご参考になさってください。

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居抜き工事とスケルトン工事の違いとは

居抜き物件工事とは、事業を開業する際に居抜き物件を選ぶことで必要となる工事のことです。 貸し物件の種類は、大きく"居抜き物件"と"スケルトン物件"の2つに分けることができます。物件の種類によって、初期費用や必要な内装工事の費用などが大きく変わります。 まずは、開業時を考える際の物件の選び方とその種類を見ていきましょう。

物件の選び方

店舗費は、開業するための店舗選びによって変わります。購入物件か貸物件かを決めますが、購入物件を選ぶ場合は、長期的に同じ場所で経営を続けていくことが前提となります。多くの場合不動産ローンを組んで購入し、毎月ローン返済がありますが、購入する分財産にもなるため最終的にはお得です。しかし経営が軌道に乗り、安定するという保証はありませんので、物件購入は慎重に検討する必要があります

一方貸物件を選ぶ場合は、毎月の家賃と管理費、契約期間ごとの更新料などがかかります。店舗の運営では経営が安定するという保証がありませんので、一般的には貸物件を選ぶ方が多いです。店舗を移転する可能性などを考えても、貸物件の方がリスクが少ないと言えます。 貸物件から始め、経営の安定が見込めてきたら購入物件への移行を検討していくのも良いでしょう。

こちらの記事ではスケルトン物件と居抜き物件の選び方を詳しく解説しているので、ご参考ください。

スケルトン物件

スケルトン物件とは、前事業の内装や設備を全て撤去し、何もない状態に原状回復された物件です。多くの賃貸契約物件では、開業時に施したリノベーションを原状回復する義務が生じます。

一般住宅の賃貸契約では、通常使用における物件の消耗や経年劣化に関する損傷は、退居時に借主が費用負担する必要がないとされていますが、店舗の場合は違います。契約時に「退居時はスケルトンの状態に戻す」という旨の記載があれば、内装の解体・撤去の費用はすべて借主が費用負担する必要があるのが一般的です。

スケルトン物件を選ぶ利点は、とことんこだわり抜いた内装や、理想のレイアウトを実現しやすいという点です。何もない状態からつくるため、居ぬき物件より融通がききやすく、不必要な設備の撤去など無駄な費用が発生しません。 個室をいくつか設けたい・床の高さを変更したいなど細かな希望に合わせて自在な内装を実現できます。しかしその分、全てを新たにつくるため、こだわるだけ工事費用はかさみ、工事日程も長引きます。

居抜き物件

居抜き物件とは、前事業の内装や設備がそのまま残されている物件です。主に、物件の次の使用者から内装や設備をそのまま使用したいという希望があったり、オーナーが居抜きであることを売りに入居者募集したい際などに、そのまま残された状態で貸しに出されます。 スケルトン物件と違い原状回復の範囲が狭まるので、退居するオーナーは費用を大幅に抑えて退去することができます。

居抜き物件を選ぶ利点は、残された内装や設備を活かして、内装費を抑えて開業ができるという点です。あらかじめ内装や設備が残されているので、内装に特にこだわりがなく設備の状態が良ければ、大掛かりな内装工事や新たな設備を導入する必要がありません。

ただし、譲り受けた設備の状況が悪い場合は、新しく設備を準備するための費用がかかることもあります。また、既にある内装が不必要で撤去したい場合なども、既存の内装を撤去して新しく内装を施すことになるため、無駄に費用が掛かってしまう可能性があります。

前事業の内装をそのまま使用するとなると、こだわりある内装デザインやオリジナリティを出すことが難しくなりますので、店舗の内装にこだわりがる場合は、理想に合う居ぬき物件が見つからない限り、居ぬき物件は不向きです。

居抜き物件を選ぶメリット

居ぬき物件はどんな場合に向いていると言えるのでしょうか。居抜き物件工事の詳細を含めてご紹介します。

とにかく費用を抑えたい

居抜き物件を選ぶ最大のメリットは、とにかく初期費用を抑えられることです。

飲食店を開業する場合、スケルトン物件なら厨房設備を一から導入する必要があります。厨房設備は特に費用が掛かるため、業種にもよりますがおよそ100~200万円前後見ておく必要があります。 さらに天井・壁・床の内装工事、付帯設備工事などを含めると、合計でおよそ300万円前後が初期費用として必要となります。

同様にオフィスや事務所の場合は、会議室、応接室、作業スペースなど様々な用途のスペースが必要ですよね。部屋を区切るために、パーテーションや間仕切り壁を設置します。 個室は数が増えるほど、コストはどんどんかかります。広さや部屋数にもよりますが、およそ100万円前後を見ておきましょう。さらに個室ごとにコンセントの増設や電話線を引くなど、必要な工程を含めて考えると300万円前後見ておく必要があります。

条件に見合う居抜き物件がみつかれば、上記の設備導入・内装工事として必要となるおよそ300万円前後を抑えられることができます。

さらにスケルトン物件では、全てを一からつくらなければならないため、レイアウトを建築士やデザイナーに依頼することになります。ご自身でレイアウトを考案するのであればその費用は必要ありませんが、店内のレイアウトなどはお客様の居心地やスタッフの作業効率に直接的に影響するため、経営にも関わるとても重要な要素です。 また、レイアウトは一度決めると変更するには手間と費用がかかるため初期段階でしっかり決めておくことが大切です。プロの視点を取り入れ、開業時点で最善に仕上げましょう。

居ぬき物件の場合は既にレイアウトができているため、建築士やデザイナーに依頼する費用も必要ないと言えます。

居抜き物件は条件に合うものがみつかるということが前提にはなりますが、開業を検討していても資金がそこまで用意できない方や、内装工事費に限りがある方におすすめです。

短期間で開業までつなげたい

居抜き物件は、本来必要な設備の導入や内装工事の一部を省くことができるため、開業までに必要な工程が少なく済むこともメリットです。物件を借りてから開業までの施工日数を抑え、工事期間を短縮して開業することが可能です。

物件が貸物件であれば契約日から家賃は発生します。内装工事期間も家賃が発生することになりますので、開業前の施工期間は必ず赤字になります。 施工期間が短くすぐに開業ができれば、開業できない期間の無駄な家賃の赤字を防ぐことに繋がります。

早く開業させて運営を軌道に乗せたいと考える方や、開業日があらかじめ決まっていてあまり期間に余裕がない場合におすすめと言えます。

前店舗の顧客を取り込める可能性がある

前事業が飲食店で、同じく飲食店を開業する場合などは、*前店舗の顧客を取り込むことができれば、開業初期から来客が見込める場合があります。 *飲食店があるという認識が既に顧客にあるため、お店が変わったことで改めて興味を持ってもらえ、さらにサービス面などが良くその評判が広まれば、出だしから安定した客入りを保てることもあるでしょう。

しかし逆に、前店舗が不潔で衛生面でのイメージが悪い場合などは、その悪評を継いでしまうこともあり得ます。「内装も設備もそのままだから、相変わらず衛生面は安心できない」など、良くない前店舗の影響を引きずってしまう可能性もあるため、様々なメリットがありながら居ぬき物件にはデメリットもあることを覚えておきましょう。

居抜き工事でかかる費用

では実際に居抜き物件を選んで開業する場合、費用はどの程度必要になってくるのでしょうか。ここからは開業までに必要な費用の目安をご紹介します。

造作譲渡料とは

居抜き物件を選ぶ際に知っておくべき言葉として「造作譲渡料」というものがあります。 「造作譲渡料」とは、新たな借主が前事業者の残した設備や内装を買い取る料金のことです。実は居抜き物件の設備や内装は、無償で使用できるというわけではありません。

本来の賃貸契約では退居時に原状回復をする義務、つまりすべての内装、設備を解体・撤去し、スケルトン物件に戻す必要があります。 前事業者は「撤退の際、原状回復費用をできればかけたくない」と考えますよね。次の借主を見つけ、その借主が設備や内装をそのまま使用したいと希望した場合、物件のオーナーから了承が得られれば居ぬき物件として明け渡すことができます。その際、次の借主に造作譲渡料を請求することもできるのです。

造作譲渡料の費用相場は、その物件の価値によっても変わりますが、およそ100~200万円程度となります。 居抜き物件は費用が抑えられるという点から、譲り受けるにあたって全く費用が発生しないと勘違いなさる方もいらっしゃいますが、造作譲渡料に関しても初期費用に含めて考えなくてはなりません。

しかし造作譲渡料は、交渉次第で割引や無償にすることも可能です。前事業者は退居時の明け渡しまでに次の借主が決まらなければ、自ら費用を出して原状回復をしなければならなくなります。「原状回復にお金をかけるのであれば、造作譲渡料を諦め、無償にして次の事業者に引き渡す方が良い」と考える方は少なくありません。 居抜き物件で開業したい場合は、造作譲渡料の有無や方針を契約前に必ず問い合わせましょう。

また、設備に関してはリース業者を挟んで譲り受ける場合もあります。その場合、新たにリース業者と契約が必要となり費用が発生する可能性もありますので、設備の所有権に関しても前もって確認をしておきましょう。

資金計画を立てる

事業を開業するにあたって、まず行うことは"資金計画を立てる"ことです。資金計画とは、開業の際に発生する費用とその予算を各項目ごとに細かく算出することを指します。 資金計画を立てることで無駄な出費や予算の偏りを未然に防ぎ、計画的に開店準備が進められます。資金計画を立てる上で必要な項目は以下の通りです。

店舗費
敷金等、手数料、前家賃

建築費
内装工事、給排水給湯工事、看板、電気工事、照明器具、付帯設備、家具

機械設備費
厨房設備等、冷暖房

什器備品費
備品等、調理道具、開業費、求人、印刷

居抜き物件であれば上記の資金項目の中の「内装工事費」や「厨房設備費」を軽減できますが、代わりに「造作譲渡料」が発生する場合があります。 資金計画では、予算を立てる段階で偏りや無駄な部分がないかどうかを確認しましょう。予算の無駄や偏りを視覚的に管理し、決めた予算内で業者に工事を依頼します。 また以下の2つの記事では居抜き工事の「注意点」「基礎知識と工事の種類」について記載されています。資金面と居抜き工事の施工内容を確認して失敗しない方法を選びましょう。 記事リンク:居抜き物件を選ぶ際のメリットとデメリットを徹底解説します 記事リンク:店舗における居抜き物件の基礎知識と工事の種類

居抜き工事の費用を抑えるポイント

居抜き工事は基本的には費用を抑えられることが特徴ですが、さらに費用を抑えるポイントをここでご紹介します。

開業予定の店舗に合った居抜き物件を探す

居抜き物件でさらに費用を抑えるためには、開業予定の店舗に合った居抜き物件を探すことが重要です。 飲食店でイタリアンレストランの開業を考えていれば、同じくイタリアンレストランだった居抜き物件を探せば、必要な調理器具がすべて揃っている場合があります。例えばピザ窯を新規で導入すると、30万円程度の費用がかかりますので、既にピザ窯があるのであれば単純に考えて30万円分費用を浮かせることができます。

しかし、飲食店という枠でくくって物件を決めてしまうのは危険です。イタリアンレストランを開業するのに前店舗がラーメン店だった物件を選択してしまっては、使える厨房設備が少ないうえに不要な設備の撤去費用が発生します。 また、ラーメン店では一般的にカウンター席が多いため、レイアウトが特殊です。家族で楽しめるようなイタリアンレストランを考えているのであれば、好ましいレイアウトではないですよね。

店舗の種類によっても適切な内装・レイアウト・設備は違います。開業予定の店舗に合わない居ぬき物件を選んでしまっては、逆に費用がかかったり、運営しずらく経営の足を引っ張ってしまう場合もありますので、理想の店舗をつくるうえで活かしやすい、または、利用しやすい居ぬき物件を探す必要があります。

造作譲渡料0円の物件広告を探す

上記の通り、居抜き物件では設備や内装をそのまま次の事業主に引き渡す際の「造作譲渡料」が発生します。交渉次第で0円にすることも可能ではありますが、中には募集段階で0円と掲げている物件もあります。 余計な交渉を避けたい方は、積極的に0円の物件広告を探してみると良いでしょう。

ただし、そのような物件の中には、次の借主がみつからないから造作譲渡料を0円にしているという物件もあります。立地が悪かったり、前事業者のイメージが悪かった可能性もありますので、選ぶ際はさまざまな点を考慮して検討しましょう。

居抜き物件工事をするときの注意点

居抜き物件は初期費用を抑えられる可能性がある反面、状態によってはスケルトン物件よりも工事費が大幅にかかることがあります。以下の注意点にも気を付けましょう。

既存の設備や内装やが生かせない場合は費用がかさむ

居ぬき物件の魅力は、開業までの初期費用を大きく抑えられることです。
既存の設備や内装をそのまま使用することが前提ですが、設備や内装の入れ替えを行いたい場合は、スケルトン物件よりも費用がかかる場合があります

入れ替える動機として、既存の内装デザインや仕様を変更したい場合や、残されていた厨房設備などに不具合があった場合です。

設備や内装の入れ替えを行う場合、先に解体・撤去の工事が入ります。入れ替えと言っても新たな設備や内装の導入と変わりはないので、スケルトン物件と施しは同じになります。
一部の設備や内装の入れ替える場合と、スケルトンで一から新たに設備や内装を施す場合の費用を比較して予算計画を立てるようにしましょう。

付帯設備に不具合がある

付帯設備とは建物にあらかじめ備え付けられている設備を指します。主に電気、ガス、水道です。 例えばオフィスの居抜き物件を選んだ際、オフィスの方針や業種によっては全席に一人一台パソコンを導入する場合が多いですよね。

パソコンを導入するのであれば、それだけコンセントが必須になります。コンセントが壁面の一部にしかない場合配線を各デスクに引くとなると、たこ足配線が増えフロア上にコードが溢れて非常に使い勝手が悪くなります。 オフィスの配線問題を解消するために、床や天井にもコンセントを増設したり、二重床にしてフロア上に配線がむき出しにならないような工事が必要になります。さらに、使用する電力が使用容量を超えてしまうようであれば、電気工事から必要となります。

借りる前にこうした付帯設備の確認を怠ると、開業後にあちこちで不具合や問題が発生し、営業開始から工事が必要になり運営に影響を及ぼすこともあります。初期の内装工事と一緒に付帯設備の工事も行えば割引になることがありますが、追加工事ではそうはいきません。 付帯設備のことまで踏まえ、あらかじめ確認のうえ資金計画と内装工事の計画を立てましょう。

まとめ

居抜き物件工事はスケルトン物件工事と違い、前事業の設備や内装がそのまま残されていることから、設備の導入や内装工事の費用を大きく抑えることが可能です。残された設備や内装をそのまま活かせる場合、費用だけでなく工事期間も非常に短期間で済ませられます。とにかく初期費用を抑えたいという方、短期間で開業までつなげたい方に向いている物件と言えます。

居ぬき物件の資金計画を立てる上で忘れがちなのが、造作譲渡料についてです。造作譲渡料とは前事業者が設備や内装を次の事業者に譲る際に請求する費用で、交渉次第で割引や無償になることもありますが、必ず掛からないというものではありません。費用を抑えたいという点から居ぬき物件で検討する方が多いですが、造作譲渡料に関しても意識をしたうえで物件探しをし、正確な資金計画を立てましょう。

また、内装工事では建物に最初から備え付けられている付帯設備の確認も重要です。付帯設備は後から追加工事となると、費用がかさむ原因になります。 居抜き物件工事での費用を抑えるポイントを知り、事業をスムーズに開業まで導きましょう。

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監修者:

渡邊 一伸(ナベさん)

大工歴35年。大手ハウスメーカーで2年間現場監督に従事。3000棟以上のリフォーム・住宅修理の工事管理の実績をもつ。阪神淡路大震災においては1年間復興財団に奔走。その後、独立し、会社を10年経営。2016年に1月に株式会社ローカルワークスに入社。