デイサービスは立地が重要
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どんな業種であっても、物件選びで重要なのは立地です。ものすごく美味しいレストランでも、南極に出したのではお客さんはやってきませんよね。南極は極端だとしても、日本国内でも利用対象者がそれほどいないような地域にデイサービスを開業してしまうことがあります。
とてもニーズの高いデイサービスという業種にも関わらず、廃業に追い込まれるケースが徐々に増えてきました。以前のようにオープンすればすぐに利用者で賑わうというような状況ではなくなってきました。
これからの競争を生き抜いていくには、きちんと立地も考慮に入れた物件選びを行わなければいけません。とはいえ、いきなり立地と言われても、何を重視すればいいのか分かりませんよね。ここではまず、立地選びで何をすればいいのかについてご紹介します。
商圏調査
まず重要なのが、開業したい地域にどれだけ利用を見込める人がいるかということです。基本的には人口が多い地域を選べばいいのですが、人口が多い地域を選ぶにしても、次の2点に注意する必要があります。
- 高齢者が多い住宅地が近くにある
- ライバルがそれほど多くない
当然ですが、いくら人口が多くても、大きな大学近くなどは高齢者よりも若者が多くなります。渋谷と巣鴨のどちらに開業すべきかを考えたとき、よほどの戦略がない限り、ほとんどの人が「巣鴨」と答えますよね。
それなのに、いざ自分で開業しようとするときには、「渋谷に賃料が安い物件が見つかった」という理由で渋谷を選ぶ人がいます。ここでいう渋谷や巣鴨というのは、もちろん例えの話です。利用を見込める高齢者が、送迎可能な範囲内に暮らしている。まずはそこのことを調査してください。
そして、もうひとつ商圏として考えなくてはいけないのが、ライバルの存在です。ある地域に300人の利用を見込める高齢者がいたとします。そこにすでにデイサービスが1つあると、その300人を2社で分けることになります。1施設あたりは150人で、すでに2施設あるとすれば1施設あたりは100人とどんどん減っていきます。
先ほどの例で言えば、巣鴨のような高齢者が多い地域というのは、すでにデイサービスが飽和状態にあります。そこに後発で入っても、よほど優れたサービスでもない限り、利用者を確保するのが難しくなります。とくにデイサービスは価格面で差を付けにくい業種ですので、現状で満足している人に来てもらうのはかなり難しいのが実情です。
商圏に対象となる利用者がそれほど多くなくても、ライバルがゼロならその地域で独占することができます。このため、商圏を考えるときには、全体でどれくらいの利用者が見込めるのかということと、それをいくつの施設で分けることになるのかを考えて、立地を選びましょう。
道路、線路の渋滞状況
商圏を考えるときに、最もシンプルな方法は、デイサービスの拠点から5kmの円を描き、その範囲内で要介護者がどれくらいいるのかを考えます。ところが、単純に5kmの円にはいっている地域がすべて商圏になるわけではありません。
例えば、商圏を分断する形で線路があったとしましょう。その間にある踏切が、開かずの踏切だったり、渋滞ポイントになっていたら、送迎困難な地域になる可能性があります。踏切だけでなく、交通量の多い国道などを利用しないといけない地域なども商圏として不適です。
さらに河川も渋滞ポイントになりやすく、河川よりも先はサービスを提供できなくなる可能性があります。物件選びを行うときには、必ず渋滞する曜日や時間帯にどれくらい混むのかを確認して、商圏として考えられるかどうかを検討してください。
地域密着型は市町村の境を意識する
小規模デイサービスはこれまで都道府県が指定していましたが、2016年から利用定員が18人以下の場合は、市町村が指定します。このため、基本的に居住地と同じ市町村にあるデイサービスしか利用できません。横浜市に開業した場合、商圏は横浜市内に限られます。
横浜市に隣接する川崎市の市境にデイサービスを開業すると、商圏の円は半分が川崎市に入ってしまいます。通常の開業と比べると商圏が半分になりますので、利用者を集めることが難しくなります。同じく海の近くの開業も商圏が狭まります。
開業をする場合は、できるだけ内陸部かつ、市町村の中心部に近い場所が理想だと考えてください。ただし、その場合は家賃が高くなりますし、すでにライバルの存在している可能性がとても高くなります。上手に空白地を探すことが重要ですが、そのような空白地はほとんど残っていません。どこかで妥協することも必要ですので、こだわり過ぎないように気をつけてください。
職員が通勤しやすいこと
意外と盲点なのが、職員が通勤しやすい場所にあるということです。すべての職員が車やバイクで通えるわけではありません。しかも台風や大雪でも簡単には休めないのがデイサービスの悩ましいところです。
街の中心部よりも郊外のほうが家賃も安くて、収益を上げやすいのですが、職員が定着してくれないことには、きちんとしたサービスの提供もできません。職員の定着のためには、通勤ストレスを減らすことも考えなくてはいけません。
職員の立場になって、通勤しやすい環境を選ぶようにしてください。デイサービスで最も重要なのが人材です。そこで働く人に不満がない環境を整えて、より良い人材が集まりやすい場所に開業しましょう。
物件の種類(スケルトン、居抜き、残置)
立地も重要ですが、物件選びもやはり重要です。物件選びをする前に、物件について最低限の知識を頭に入れておく必要がありますので、まずは物件の種類について簡単に説明します。物件は「スケルトン、居抜き、残置」の3種類に分類することができます。ぞれぞれの特徴について見ていきましょう。
スケルトン物件
スケルトン物件は内装が何もされていない、コンクリートがむき出しになっているような物件です。理想のデイサービス施設を開業できますが、ゼロから作り上げていかなくてはいけませんので、コストがかなり高くなります。
内装工事にくわえて、設備の導入費用も発生するだけでなく、もし退去するときにはスケルトン状態に戻さなくてはいけません。何をするにしてもお金がかかりやすいタイプの物件ですので、十分に余裕のある予算を用意しておきましょう。
居抜き物件
居抜き物件は以前にデイサービスを行っていた物件を、そのまま引き継ぐ形で開業するスタイルの物件です。デイサービスに必要な設備を安価に譲り受けることができ、内装も最小限の手入れで済みますので、初期費用を大きく減らすことができます。
ただし、増えてきたとはいえ、デイサービスの廃業や移転はまだそれほど多くはありません。利用者の引き継ぎできるという魅力があるものの、廃業するにはもちろん理由があるはずです。その理由を把握せずに引き継いでも同じことが起こる可能性があります。なぜ居抜き物件になるのか、その理由をきちんと理解した上で利用しましょう。
残置物件
残置物件というのは居抜き物件に似ていますが、以前のオーナーが廃業などして、しばらく放置され続けた物件をいいます。内装や設備をそのまま利用できる可能性もありますが、すべてが老朽化している可能性もあります。利用者の引き継ぎも出来ません。
思ったよりも残置物件はコスト面でのメリットがありません。立地条件を満たすといった、他の面でのメリットがある場合に利用するのは構いませんが、「お得かも」という思いで飛びつくと損をする可能性もありますので、しっかりとした下見を何度も行って決める必要があります。
物件探しのポイント
物件の種類を把握したら、次は具体的な物件探しのポイントをご紹介します。どのような物件を選ぶべきなのか、意識してチェックすべきポイントを見ていきましょう。
物件の事業所規模
すでに説明しましたが、利用定員によってデイサービスの管轄が違ってきます。19人以上の定員がある場合には都道府県の管轄になり、18人以下なら市町村の管轄です。まずは、開業しようとしているデイサービスがどの規模のものなのかを決めてください。これを決めなければ、物件を選ぶことができません。
それぞれに必要となる設備やその規模が違ってきます。相談をする相手も変わってきますので、まずはしっかりとしたコンセプトを固めてください。少なくとも大規模・通常規模なのか、地域密着型なのか、それとも小規模なのかを決めて、それをベースに物件選びを行いましょう。
設備基準を満たしているか
デイサービス施設を開業するとしても、ただそこに空間があればいいというわけではありません。しっかりとしたサービスを提供できるだけの設備基準を満たしている必要があります。
- 機能訓練室(デイルーム)
- 相談室
- 会議室
- 事務室
- 食堂
- トイレ
- 浴室
- 厨房もしくは配膳室
- 消防施設
思ったよりもたくさんの部屋が必要になります。 これ以外にも市町村の条例などに定められた設備が揃えられない物件の場合は、開業許可が認められません。 どのような設備が必要なのか、都道府県や市町村の担当者に確認した上で、それを満たす物件を選びましょう。
デイサービス店舗の使用が許可された物件を選ぼう
物件の内覧まで済ませて、いざ契約をしようとしたら、大家さんからNGが出るということがあります。仲介に入っている不動産業者がきちんと確認していないことが悪いのですが、それを後から言っても仕方ありません。
デイサービスとして利用できる物件であることを調べていないと、すべてかやり直しになり、数ヶ月ほどを無駄にすることもあります。不動産業者に対しては、デイサービスでの利用であることをきちんと告げて、大家さんの許可が出ていることも確認しておきましょう。
デイサービスに向いている物件であるかどうか
物件の内覧をするときには、建物がデイサービスに適していることもよく確認しておきましょう。例えばバリアフリーに対応しているのか、内装工事で対応可能なのかをきちんと見ておきましょう。洗面台なども車イスで利用できるものなのかといった実務面でのチェックも行いましょう。
基本的には送迎での利用になりますので、送迎車用のスペースや、家族が迎えに来たときなどの駐車スペースを考えておく必要があります。もちろん職員の車を停めるための駐車場も必要です。駐車場が近くにないため、職員が毎日長い距離を歩かなくてはいけないというのでは、離職率が高まってしまいます。
デイサービスですので、救急車が入ってこれる場所にあるということもとても重要です。細い路地の先や、渋滞する大きな通りはできるだけ避けて、アクセスの良さも検討しておきましょう。
まとめ
デイサービスは不足している状態ではあるものの、一部地域ではすでに飽和状態にあります。このため、どこに開業するのかというのが、これからとても重要になってきます。対象者が多くてライバルが少ないという地域は、すでにほとんどなくなっています。このため、理想通りの立地選びはできませんが、できるだけ理想に近い場所を妥協せずに探しましょう。
どこに開業するかを決めたら、次はどのような物件を選ぶべきかを考えましょう。デイサービスという業種ですので、少なくとも自治体が認めてくれるだけの設備を整えておく必要があります。さらに物件がデイサービスとして利用できるように、バリアフリー対応しているか、内装工事で対応可能かを重視して選びましょう。
そこまで行って初めて、開業のためのスタートラインに立てます。ここでご紹介した内容を軽視すると、経営が安定するまでに時間がかかってしまい、サービスの提供に集中できなくなってしまいます。そうならないためにも、立地選びと物件選びには徹底してこだわって、地元に根付いた魅力的なデイサービス施設を作り上げてください。
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