2021年12月7日

オール電化とガス併用はどちらがお得?コスト・安全性・特長を徹底比較

家をこれから建てようとしている人の多くが、ガスや電気といったライフラインについて悩んでいるかと思います。「オール電化のほうが光熱費は下がる」「いやガス併用のほうが安い」どの意見が正しいのか、聞けば聞くほど分からなくなります。ここでは中立の立場になって、それぞれの特徴をご紹介し、何を基準に選べばいいのか説明します。

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オール電化の特徴

まず、オール電化の特徴について見ていきましょう。オール電化は、その名前からも分かりますように、お風呂もキッチンもガスではなく電気を使います。 「電気でどうやってお湯を沸かすの?」「効率は悪くないの?」そんな基本的な部分で悩んでいる人もいますよね。

実は電気でお湯を沸かすことは、それほど技術的に難しいことではありません。 電気で熱を起こせることは電気ヒーターやエアコンなどからわかりますよね。 お手元にあるスマートフォンも充電していると熱を発したりします。電気で生成した熱を使ってお湯を沸かすというわけです。

オール電化にするには、エコキュートという機器を利用します。エコキュートは大気中の熱を使って、水をお湯に換えるのですが、その熱を取り込んだり、圧縮させてさらに高熱にするのに電気を利用します。

また、エコキュートは電気代を安くするために、原則として電気料金の安い夜間電力を使ってお湯を作ります。 夜間にお湯を作ってもその場で使うわけでありませんので、どこかに貯めておく必要があります。 このため、エコキュートは水をお湯にするヒートポンプユニットだけでなく、お湯を貯める貯湯タンクも設置しなくてはいけません。

基本的な考え方としては、ガス給湯器の代わりにヒートポンプユニットを設置して、お湯を貯めるために貯湯タンクも設置するのだと覚えておいてください。

IHクッキングヒーターの場合は、磁力線を利用して調理を行います。磁力線が発生すると、鍋底に渦電流が発生します。 鍋の素材には抵抗がありますので、電流が発生すると発熱するという仕組みです。少し複雑な仕組みですが、とても効率よく熱を発生させることができます。

オール電化のメリット

  • 光熱費を一元管理できる
  • 家の中で火を使わないので安全性が高い
  • 使い方によっては光熱費を削減できる
  • 災害時の復旧が早く、復旧しなくてもお湯を使える

オール電化のメリットは、光熱費の一元管理安全性の高さにあります。 光熱費を引き落としにしている人はそれほど大きなメリットには感じないかもしれませんが、一元管理すると使い過ぎがひと目で分かりますの、節約しやすい環境になります。 また火を使わないので、火事の心配が大幅に減ります。

さらに、使い方次第では光熱費も下げることができます。「使い方次第」というのがポイントですので、この点に関しては後ほど詳しく説明します。

また、災害発生時には、ライフラインのうち電気が最も早く復旧すると言われています。 さらに災害発生時には水不足で悩まされますが、オール電化の場合は貯湯タンク内にお湯がありますので、しばらくは水のある生活を送ることができます。

オール電化のデメリット

  • 初期費用が高い
  • タンクのお湯を使い切るとお湯を使えなくなる
  • 停電するとライフラインが全て止まる
  • IHクッキングヒーターは調理器具を選ぶ
  • 調理時に火を見て火力調整ができない
  • 貯湯タンクのお湯は飲用に適さない

オール電化の普及がいまいち進まないのは、思った以上にデメリットがあるためです。 初期費用の高さは許容できたとしても、貯湯タンクのお湯を使い切るとシャワーをあびることもできず、停電するとライフラインがすべて止まってしまうというリスクもあります。

さらに料理好きの人は、火が見えないことに不安を感じるケースが多く、人によっては「IHでは美味しく作れない」と言う人もいます。 これに関しては個々の感覚の違いなどもありますので、デメリットと言うほどではないかもしれません。 ただし、IHにすることでこれまで使い慣れた調理器具が使えなくなることもありますので、気をつけましょう。

また、貯湯タンクのお湯は飲用に適していません。これは貯湯タンク内の衛生状態が管理されていないのと、いつ供給された水なのか分からないためです。 実際には安全性がそれほど低いわけではありませんが、ほぼすべてのエコキュートの取扱説明書には「飲用に適していません」と記載されています。

ガス併用の特徴

ガス併用というと、何か難しいことのように思えますが、単純にお湯を沸かしたり、暖房器具を使ったりするのに都市ガスやプロパンガスを利用するということです。 オール電化ではない家庭は、ほぼガス併用だと考えてください。

ガス併用を考えるときには、都市ガスかプロパンガスかを選択することになりますが、都市ガスを使いたくても、ガス管が家まで来ていない場合には利用できません。 例えば東京23区内であれば、多くの地域で都市ガスを利用できますが、東京の西側半分ではプロパンガスしか使えません。

一般的には都市ガスのほうがコスト面でのメリットがあると言われていますが、都市ガスの場合は、ガス管が破裂するなどのトラブルがあるとガスを使えなくなります。 このように都市ガスは災害時の復旧に時間がかかるというデメリットを抱えています。

ガス併用のメリット

  • 都市ガスなら光熱費が低く抑えられる
  • 必要なときに必要なだけお湯を作れる
  • 導入コストが低い
  • ガスファンヒーターならすぐに室温を上げられる

ガス併用にすると、都市ガスであればオール電化よりも光熱費を抑えられることもあります。 そして、オール電化のようにお湯切れの心配がないというのも日々の生活では大切なことです。 さらにエコキュートと違って、作ったお湯を飲用することもできます。

導入コストが低いというのも、予算が限られている人には大きな魅力ですよね。 導入コストだけでなく、実用面でもガスはとても使い勝手のいいことで知られています。 エアコンは室温を上げるのにかなりの時間がかかりますが、ガスファンヒーターならあっという間に部屋が暖かくなります。

ガス併用のデメリット

  • 火を使うので火事などの心配がある
  • プロパンガスの場合は光熱費が高くなる可能性がある
  • 都市ガスは災害時の復旧に時間がかかる

ガス併用は思ったよりもデメリットがありません。 オール電化の家が出てくるまでは、ほとんどすべての家でガス併用だったわけですから、様々な面でデメリットが改善されてきた歴史があります。 とはいえ、オール電化と比べると火を使うので、安全面では劣ってしまいます。

さらにプロパンガスの場合は、ガス料金が自由に設定されますので、驚くような高額な請求をされることもあります。 コストについては後ほど詳しく説明します。

都市ガスなら、光熱費を抑えられますが、災害時のライフラインとしての弱さが気になります。 震災などが起こったときに、ガスの安全確認にとても時間がかかるためです。 ガス管のどこか一部でも破損していると、その先の家庭ではガス管を交換するまでお湯を使えなくなります。

ガス併用の場合、都市ガス、プロパンガスでコストが変わる

ガス併用時は都市ガスとプロパンガスのいずれかになると説明しましたが、それぞれの最大の特徴は価格設定にあります。 都市ガスは料金設定に国の許可を取らなくてはいけません。 これに対してプロパンガスは自由料金ですので、ガス会社が好きに決めることができます。

この差が「プロパンガスは高い」という評判に繋がっています。 それでは実際のところ、どれくらいのコスト差があるのでしょう?

都市ガスとプロパンガスの火力の違い

  • 都市ガス:約10,750kcal/㎥
  • プロパンガス:約24,000kcal/㎥

上記は単純にそれぞれの熱量を比較したものです。プロパンガスは都市ガスの約2.2倍もの熱を持っています。 これがそのまま火力とはなりませんが、シンプルに考えれば同じ量のお湯を沸かすのであれば、プロパンガスは都市ガスの45%の容量しか必要ありません。

参考:プロパンガス料金消費者協会 / プロパンガスと都市ガスの特性比較

都市ガスとプロパンガスの料金の違い

都市ガスもプロパンガスも基本料金と従量料金があり、使用量によって金額が違います。

プロパンガス:20㎥使用/月
都市ガス:44㎥使用/月(20㎥×2.2倍)

東京都でのプロパンガスの適正料金は次の式で求められます。(2018年1月16日現在)

適正料金=1500円(基本料金)+280円×使用量(㎥)
使用量が20㎥なら、適正料金は7100円です。

同じく東京ガスの料金がどれくらいになるのか、見てみましょう。 東京ガスの料金は次の式で求められます。(2018年1月16日現在)

都市ガス料金=1036円(基本料金)+128円×使用量(㎥)
使用量が44㎥なら、都市ガス料金は6668円です。

思ったよりも両者に差はありませんよね。でも実際にはプロパンガスが適正料金で提供されることはありません。 20㎥使用時のプロパンガスの相場は次のようになっています。

東京都八王子市:基本料金 1662円/単価 520.4円
東京都都心部:基本料金 1720円/単価 642.85円
(2017年10月現在)

東京都都心部では単価が800円もするような、高価格のプロパンガスもあります。 こうなってくるとプロパンガスは都市ガスと比べると、かなり割高になるのが分かります。 プロパンガスか都市ガスかを決めるときには、必ず料金シミュレーションを行って、どれくらいの価格差になるのかをチェックしましょう。

そのうえで、利便性も考慮して最適なガスを選ぶようにしましょう。 ちなみにアパートやマンションではプロパンガス会社を選べませんが、一軒家ならプロパンガス会社を自分で選ぶことができます。 家を建てる地域に供給しているプロパンガス会社をすべて調べて、基本料金と単価の一覧表を出してもらいましょう。その中から最適なプロパンガス会社を選んでください。

参考:プロパンガス料金消費者協会 / 適正料金早見表 2018(一戸建)
参考:東京ガス / ガス料金表(家庭用 / 業務用・工業用 共通)

オール電化とガス併用の安全性の比較

オール電化とガス併用を検討するときの重要なポイントとして、「どちらのほうが安全か」という議論があります。火を使わないのだからオール電化のほうが安全に決まっているじゃないかと思うかもしれませんが、安全・危険は火だけの問題ではありません。ここでは様々な角度から安全性について比較しています。

火災のリスク

火災リスクを考えると、火を使っているガス併用のほうが危険度は高くなります。火傷などのリスクもあるため、この点に関してはどう考えてもオール電化のほうが有利です。ただし、オール電化では絶対に火災が起きないわけではありません。

電気機器ですので、漏電などによって火災が発生する可能性がありますし、油を加熱しすぎて自然発火させてしまうケースもあります。オール電化なら100%火災が起きないわけではありませんので、取扱説明書をきちんと読んで、日々のメンテナンスもしっかり行いましょう。

健康へのリスク

オール電化が普及しないもうひとつの理由が、健康面での安全性が保証されていないためです。オール電化には次の2つの健康問題があるとされています。

  • 電磁波による健康被害
  • エコキュートの低周波騒音

電磁波による健康被害に関しては、WHOでは「身のまわりの電磁波で、小児白血病に関連する証拠は因果関係とみなせるほど強いものではない。」としています。ただし、様々な調査結果の一部には健康被害があるというものもあります。

残念ながらここでは、どちらが正しいとは判断はできませんが、そのようなリスクがゼロではないということを頭に入れておきましょう。

また実際の被害として報告されているのが、エコキュートによる低周波騒音です。エコキュートの騒音によって、眠れなくなったり、頭痛が発生したりすることがあります。ノイローゼなどになることもあり、実際に訴訟問題にもなっています。

低周波騒音に関しては、各メーカーと施工業者が問題を認識しているため、様々な対策を行っています。このため、エコキュートの設置にはきちんとした知識のある施工業者に依頼する必要があります。

オール電化とガス併用のコストの比較

安全面に関しては、いずれも一長一短だということが分かったと思いますが、コスト面ではどちらのほうが優れているのでしょう?初期費用とランニングコストに分けて見ていきましょう。

初期費用の比較

オール電化にかかる初期費用

エコキュート本体

実売30万~50万円

エコキュート工事費

10万~20万円

IHクッキングヒーター本体

10万~20万円

IHクッキングヒーター工事費用

5万~10万円

合計

55万~100万円

ガス併用にかかる初期費用

ガス給湯器本体

5万~25万円

ガス給湯器工事費

3万~5万円

ガスキッチン本体

2万~20万円

ガスキッチン工事費

2万~3万円

合計

12万~53万円

ガス併用の場合はオール電化に比べて半額以下に抑えられます。 実際には、さらに家の中の配線や配管なども加わりますが、圧倒的に初期費用はガス併用のほうが安いことには変わりありません。

ランニングコスト比較

ランニングコストは使用条件によっても変わりますので、ここでは先ほどのプロパンガス20㎥を使用するのと同等の熱量で比較します。

【オール電化にかかるランニングコスト】
プロパンガス20㎥のエネルギー = 24,000kcal × 20㎥ = 480,000kcal(= 558kWh)

【TEPCOスマートライフプラン】
午前1時~午前6時:17.46円/kWh
午前6時~午前1時:25.33円/kWh

すべての電力を深夜時間に利用した場合:9742円
すべての電力を昼間時間に利用した場合:14134円
それぞれ半分の利用した場合:11,938円

【ガス併用にかかるランニングコスト】
都市ガス(44㎥):6668円
プロパンガス(20㎥):7100円

オール電化のランニングコストが、まったく安くないことがわかります。 ただし、プロパンガスの場合は、この倍近い費用がかかるケースもありますので、その場合はプロパンガスよりもオール電化のほうがランニングコストは下がります。

オール電化はランニングコストが安いというイメージがありますが、東日本大震災後に電気料金が大幅に値上げになっているため、実はランニングコスト面ではあまりメリットがありません。

参考:TEPCO / スマートライフプラン(ご家庭向け)

どちらを選ぶべきか悩んだら?

オール電化とガス併用それぞれの特徴と、安全面とコスト面での比較をしてきましたが、結局どちらが有利なのか、はっきりとした答えは出ませんでした。 そうなるとやっぱり悩んでしまいますね。ここでは、オール電化とガス併用、それぞれどのようなタイプの家庭が向いているのか、ご紹介します。

オール電化が向いている

  • ガスの選択肢が適正料金よりも高いプロパンガスしかない
  • 太陽光発電システムを導入する
  • 高齢者や小さなお子さんがいて火を使いたくない

オール電化が光熱費の面で有利になるのは、高額な料金設定のプロパンガスしか選択肢がない場合のみです。 オール電化は光熱費が安くなるというのは、東日本大震災前の話です。現在はきちんとしたシミュレーションをしないと判断できません。 ただし、太陽光発電システムを導入するのではれば話は変わってきます。この場合はオール電化にするのがおすすめです。

また、高齢者や小さなお子さんが家にいて、ガスコンロが危険だと感じるのであれば、IHクッキングヒーターを利用できるオール電化を利用しましょう。 ガス漏れの危険性もありませんし、空気が汚れないというメリットもあります。

ガス併用が向いている

  • 都市ガスを使用できる
  • コストをできるだけ抑えたい
  • 泊まり客が多い

都市ガスを使えて、なおかつ光熱費をできるだけ抑えたいのであれば、ガス併用を選びましょう。 最近はエコジョーズなど、効率のいいガス給湯器が売られていますので、それらを利用すれば、さらに光熱費を抑えることができます。

また、家族の他に泊り客が多い場合も、必要なときに必要なだけお湯を沸かせるガス併用がおすすめです。 お客さんがシャワーを使っているときに、お湯切れになったら大変です。 普段は夫婦2人暮らしで、年末年始やお盆になると子どもたち家族がやってくるという場合でも、安心してお風呂に入ることができます。

まとめ

オール電化は光熱費を抑えることができると言われていたのは、少し前の話です。現在は高額なプロパンガスよりは安くできることもありますが、電気料金の値上げにより光熱費でのメリットはほとんどありません。

そうなってくるとオール電化にメリットはないように感じますが、オール電化の良さはコスト以外にもあります。利便性の良さや火災リスクの低さなど、導入するには十分過ぎるメリットがありますので、何を最優先するのかをしっかり考えてください。

どちらが適しているのかは、家族のライフスタイルによって変わってきます。ここで紹介した特徴や選択基準を参考にして、自分たち家族に最適なものを選ぶようにしてください。

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監修者:

渡邊 一伸(ナベさん)

大工歴35年。大手ハウスメーカーで2年間現場監督に従事。3000棟以上のリフォーム・住宅修理の工事管理の実績をもつ。阪神淡路大震災においては1年間復興財団に奔走。その後、独立し、会社を10年経営。2016年に1月に株式会社ローカルワークスに入社。