エコキュートのお湯が飲めない理由
一般的に、エコキュートのお湯は飲まないようにと説明書にも書かれています。これはタンク内の汚れがお湯に入り込むからだと思われていますが、お湯そのものにそれほど危険性はありません。もし貯湯タンク内に貯めるのがNGなのであれば、マンションなどの貯水タンクもすべてNGとなってしまいます。
エコキュートのお湯を飲んではいけないという本当の理由は、貯湯タンクにお湯を入れることで水質基準を満たせなくなる可能性があるためです。貯水タンクであればカルキの入った状態で水を貯めることができますが、エコキュートは一度温めているため、カルキが抜けてしまい、国の指定する安全状態ではないため「飲んではいけない」とされています。
このため、毎日のようにタンク内のお湯をほとんど使い切るような場合には、ほとんど問題なく飲むことができます。ただし、実際に飲むかどうかは自己責任ということになります。何か起きても、少なくともメーカーは保証してくれません。
その代わり、最新のエコキュートには「飲用可」となっている商品があります。飲用のお湯だけはタンクに貯めることなく、急速に水を沸かしてお湯をつくり蛇口から出すため、安全上も問題なく利用できるというわけです。ただし、これはリアルタイムでお湯を沸かしますので、時間帯によっては電気代が割高になります。
いずれにしてもエコキュートのお湯が飲めないことと、貯湯タンク内の清掃とは直接的には関係ありません。それではなぜ貯水タンクのメンテナンスが必要なのか、そしてどのようにして掃除するのかについて見ていきましょう。
貯湯タンクの仕組み
エコキュートの貯湯タンクというと、四角くて背の高いボックスをイメージする人も多いかもしれませんが、それは貯湯タンクユニットの外観でしかありません。実際には円筒状のタンクがユニットの中に納められています。
貯湯タンクの下部には水道水の入口があり、そこから貯湯タンクに水を貯めます。貯められた水は、同じくタンク下部にある出口を通ってヒートポンプに流れていきます。ヒートポンプで暖められたお湯は、貯湯タンクの上側から供給されタンク内に貯められます。
それでは冷たい水と温かいお湯が混ざってしまうのではないかと思うかもしれません。実際にお湯とお水は混ざってしまうのですが、お湯は水よりも重さが軽いためタンク上部にお湯が貯まり、水はタンク下部に貯まるように出来ています。
最近の若い人はあまり知らないかもしれませんが、以前はお風呂でお湯を沸かすと、浴槽の上側に熱いお湯だけが貯まるため、それをかき混ぜてから入浴していました。その仕組を利用したのがエコキュートというわけです。
タンクの上部にお湯を貯めますので、シャワーやお風呂の給湯はタンク上部から行います。また、お風呂の追い焚きなどは、タンク上部から取り出したお湯を熱交換器に流し、そこで浴槽内のお湯を温めます。タンク側の温度が下がったお湯はタンク下部から再びタンク内に戻り、水として利用されます。
物理的な構造だけ見ると貯湯タンクはただの円筒です。タンクの材質としてはサビのほとんど発生しない「ステンレス」を採用しています。古いタイプのエコキュートではタンクが錆びるようなことがありましたが、最新の商品はそのあたりの課題はほとんどすべて改善されています。
タンク下には不純物が溜まりやすい
貯湯タンクはステンレスで、サビがほとんど発生しないのであれば、なぜ貯湯タンクのメンテナンスが必要なのでしょうか? 水とお湯しか入ってないので、汚れも発生しないはずです。ところが実際には貯湯タンクはどんどん汚れが溜まっていきます。
もし水道水が純水であるなら、タンク内に汚れは発生しません。ただし、純水はバクテリアが発生しやすいため、様々な添加物が含まれています。しかも、自然界には純水と呼ばれる状態の水はほとんど存在しません。
私たちが利用している水道水は、川の水を利用していますので、ミネラルが含まれていますし、雑菌などもたくさん含まれています。このミネラルがタンク内に溜まりやすい成分のひとつですが、それとは別に、殺菌をするために塩素も投入しています。
このように、水道水には様々な成分が含まれています。これらの成分は、水をお湯にする過程で析出し、タンク下部に不純物として堆積します。重さがあるため、水道の蛇口から不純物が出てくることはまずありませんが、貯まった不純物を放置し続けると、タンク下部にこびりついてしまう可能性があります。
また、貯湯タンク内のお湯や水は空気に触れることがありませんので、ヘドロが発生することがないとされてきましたが、実際には長年使ってきたエコキュートを切断してみると、湯垢がヘドロ状に溜まっていることがあります。
いずれの場合も、汚れはタンク下部に貯まりますので、定期的に水抜きを行っておけば、タンク内に汚れが増え続けるということはありません。反対に、水抜きを怠ればどんどんと無駄なものが堆積します。これが、貯湯タンクのメンテナンスを行わなければいけない大きな理由になります。
タンクのよくあるトラブル例と原因
貯湯タンクのメンテナンスを怠るとどんなことが起きるのか。タンクのよくあるトラブル例とその原因についてご紹介します。
浴槽に黒い粉のようなゴミが溜まる
エコキュートを長く使っていると起こるトラブルですが、お風呂に入ろうとすると浴槽に黒い粉のような汚れが溜まっていることがあります。これは配管の接続部などに使われているパッキンが劣化してお湯に混ざったものです。
この状態になるとパッキンを交換しなくてはいけません。劣化が始まっていますので、放置しておくとそこから水漏れが発生します。ただし、どのパッキンが劣化しているのか分かりませんし、なおかつ他のパッキンも同じ現象が起こる可能性がかなり高いため、パッキン交換ではなくエコキュートの買い替えの検討が必要になります。
10年以上使っているのであれば、エコキュートの寿命ですので新しいエコキュートへの買い替えをおすすめします。
お湯のニオイが臭い
本来ならお湯は何のニオイもするはずがないのですが、貯湯タンクのメンテナンスをしていないと、お湯が臭くなることがあります。例えば貯湯タンクのドレン配管が、生活排水の配管とつながっている場合、そこを通じて臭いがタンク内の水についてしまうことがあります。
また使い始めには配管の接着剤がしっかりと乾ききっていないため、接着剤の臭いがついてしまうこともあります。この場合はしばらくそのまま使用して、改善されないようであれば、施工業者に相談してみましょう。
エコキュートを長く使っていなかった場合には、エコキュート内に溜まっていた水が腐っている可能性があります。この場合も汚臭の原因になりますので、水がもったいなくても一度、すべての水を排水し、空っぽにしてから再稼働させましょう。
浴槽やタオルが青くなる
蛇口から出てくお湯が青い。そういうケースのほとんどが「そう見えるだけ」で実際には無色透明のお湯が出ています。配管の銅が析出して青く見えると言われていますが、お湯が青く見えるほど銅が溶け出すことはまずありません。ただし、まったく溶け出さないかというとそうではありません。
微量に溶け出した銅が、浴用石鹸や皮脂と反応して青い不純物としてこびりついてしまうことがまれにあります。しばらくすると落ち着くと思いますので、それまではこまめに汚れをこすり落とすようにしましょう。放置すると取れなくなってしまうこともあります。
断水後にお湯が濁ってしまう
配管工事などで一時的に断水することがまれにありますが、断水解除後にそのままエコキュートを動かすと、シャワーのお湯などが白濁することがあります。これは断水によって水が汚れてしまったためで、そのまま使っているとフィルターが目詰りする可能性があります。
すでに給水してしまった場合は、もったいないですがタンク内の水とお湯をすべて抜いてください。対策としては断水中にエコキュートの「給水配管専用止水栓」を閉じておきましょう。断水が終わったら、洗面所などの蛇口から白濁が収まるまで流し続けてください。白濁がなくなったのを確認したら、「給水配管専用止水栓」を開けてエコキュートの使用を再開しましょう。
タンクの水抜きの方法
タンクのメンテナンスの基本は水抜きです。ただ水を抜くだけではなく、タンク下部に貯まった汚れを水と一緒に取り除くことを目的としています。メーカーによって多少水抜きの手順は変わりますが、一般的な手順についてご紹介します。
- 漏電遮断器をOFFにする
- 給水配管専用止水栓を閉じる
- 逃し弁レバーを開放にする
- 排水栓を開いて2分間排水する
- 排水栓を閉じる
- 給水配管専用止水栓を空けてタンクを満水にする
- 逃し弁レバーを閉じる
- 漏電遮断器をONにする
- お湯が出ることを確認する
基本的な流れはこのようになります。まずは漏電遮断器を切り、その上で給水をストップさせるために給水配管専用止水栓を閉じます。逃し弁を開放するのは、空気が入るようにしておかないと、タンク内の水を排水してタンク内が真空状態になるのを防ぐためです。
水抜きをしたら、あとは反対の手順で元に戻すだけです。このメンテナンスは年に2~3回行ってください。冬場の水抜きはとても大変ですので、冬以外で水抜きするのをおすすめします。
タンクの掃除方法
エコキュートは内部に手が入らないような構造になっています。このため浴槽のようにブラシなどを使って掃除するということができません。水抜きだけでもそれなりに汚れは落とせるのですが、タンク壁面のぬめりなどは水抜きでは落とし切ることができません。
配管であればジャバなどの洗剤で汚れを落とすことができますが、タンク内部はとても大きいため、ジャバは効果的ではありません。素人が無理に汚れを落とそうとしても、エコキュートを壊してしまう可能性があります。タンクのメンテナンスとしては、水抜きだけにしておきましょう。
汚れがひどい場合は業者に依頼
何度水抜きをしても汚れがまったく落ちないというような場合は、専門の清掃業者に清掃の依頼をしましょう。専門の業者であってもタンク内部を直接洗うことはできませんが、特殊な薬剤などを使って、タンク内の汚れを落としてくれます。
ただし、タンク内は見ることができませんので、実際にどれくらい汚れが落ちたのか分かりません。このため、詐欺のような営業をしている会社も少なくありません。訪問営業をしている業者のほとんどが、これに当たります。きちんとした業者は訪問での営業を行いませんので、そのようなところに清掃の依頼をしないように気をつけましょう。
また、業者に依頼するときには配管も含めた清掃をしてもらいましょう。汚れの原因は貯湯タンクだけでなく、ヒートポンプの配管などにもあります。費用は高くなりますが、清掃をするのであれば、一度にまとめて行うことをおすすめします。
専門業者に汚れを落としもらったからといって、安心しないようにしましょう。大事なのはあくまでも日頃のメンテナンスです。きちんとメンテナンスをしていれば、エコキュートの寿命まではきちんと使えるはずです。業者に依頼するのは無駄な出費だと考えて、きれいにしてもらった後は、きちんと定期的なメンテナンスを行ってください。
まとめ
とても便利なエコキュートですが、寿命までトラブルなく利用し続けるには、きちんとしたメンテナンスが重要なことが分かってもらえたかと思います。理想はメンテナンスも自動で行ってくれることですが、現段階では手動のメンテナンスは必須です。いずれ自動メンテナンスのエコキュートが出てくるかもしれませんが、いまは年に2~3回の水抜きをきちんと行いましょう。
貯湯タンク内は完全に閉じられた空間ですので、ブラシなどで汚れを落とすことができません。個人でできる清掃方法は水抜きだけです。ジャバなどの洗剤でもタンク内の汚れは落とせませんので、水抜きで汚れを落とせなくなった場合には、専門の清掃業者にメンテナンスの依頼をしてください。
貯湯タンクの清掃をする業者はいくつもありますが、訪問営業をしている業者の多くが詐欺です。貯湯タンク内部を見ることができないのをいいことに、適当なことを言って高額な清掃費用を請求してきます。清掃を依頼するときには、きちんとした店舗のある業者に依頼しましょう。また、タンク内の清掃を依頼するときには、タンクだけでなく配管なども掃除してもらいましょう。
また、設置から10年以上経過している場合にはエコキュートの寿命が近いため、清掃をするよりも買い替えのほうがいいというケースもあります。もったいないと思うかもしれませんが、これから不具合がどんどん出てきますので、買い替えを前提に検討してください。
こちらのページでは、エコキュートの施工事例や商品、その他お役立ち情報をまとめています。 エコキュートの設置や交換をご検討の方はぜひ参考にしてください。
エコキュートの設置や交換に併せて、お風呂のリフォームを検討している方はこちらのページも参考にしてください。
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