漆喰とは
出典:photoAC
「漆喰の壁がいい」と言われる方でも、実際にどのようなものなのかきちんと把握している方はあまりいないのではないでしょうか。古民家風のカフェなどで使われているのを見て、自宅の壁にも使用したいという方もいらっしゃると思います。
漆喰と珪藻土を同じものだと考えている方もいるかもしれません。珪藻土については後ほど詳しく説明しますので、まずは漆喰がどのようなものなのかを説明していきます。
- 漆喰は塗り壁材のひとつ
- 原材料は石灰
簡単に説明すると、漆喰とは石灰で作られた塗り壁材のことです。石灰というと、小学校などのグランドで白線を引いている場面を思い浮かべる方がいるかもしれませんが、まさにその石灰と漆喰は同じものと考えてください。
そうはいっても、石灰だけでは当然壁材にはなりません。それらにのりや海藻などを混ぜることで、粘り気や滑らかな質感が出るように仕上げられています。
日本の建物は土で作られているため、雨や風に弱いという特徴があります。
このため、耐水性や強度を上げるために土の上から漆喰を塗る文化が定着しました。漆喰は燃えることもありませんので、耐火性にも優れています。
ただし、漆喰には細かな定義がありません。例えば、日本漆喰協会の定義では「消石灰を主たる固化材とし、建築物の内外装又は天井等を鏝塗りなどによって仕上げる材料である」としているため、該当するものはすべて「漆喰」という枠組みに入ります。
石灰を主とした壁材を使用すれば、伝統的な工法で作業した壁と、簡易的な工法で作業した壁は、同じ漆喰仕上げということになっています。もちろん壁材によって必要になってくる費用には大きな開きがありますので、漆喰の種類や費用については後ほど詳しくご紹介します。
漆喰の特徴
漆喰がどのようなものなのか理解できたところで、その特徴について詳しく見ていきましょう。近代化が進んだこの時代に、あえて古い技術である漆喰を使用する方が増えていますが、その魅力とは何なのでしょうか?
- 肌触りがいい
- メンテナンスをしなくていい
- 自然素材で作られている
- 機能性の高い漆喰が増えている
漆喰の魅力はなんといっても肌触りの良さです。漆喰壁の表面はとてもスベスベしていて、手に触ると気持ちよくなるような仕上がりになっています。ザラザラの壁材をイメージしている方は、漆喰ではなく珪藻土に触れたのかもしれません。
漆喰はお城や蔵などに使われていますが、100年かけて固まっていくといわれています。メンテナンスは多少していると思いますが、長い期間放置しても見た目の変化があまりなく、上塗りするだけである程度の汚れや傷は消すことができます。
また、原材料は自然素材がベースとなっています。漆喰は化学物質などがなかった時代に発明された、歴史のある壁材です。簡単に手に入るものだけで作られていますので、仕上がりは自然な風合いになるのも漆喰の特徴です。
さらに、最近は様々な機能を持った漆喰壁が増えています。あまり知られていませんが、通常の漆喰壁には調湿性がほとんどありません。ところが、最新の漆喰材の中には従来のものよりも高い調湿性を持たせたものがあり、その他にもより快適な空間を作るために、いまでもなお新商品が開発されています。
漆喰の壁にするメリット・デメリット
漆喰は見た目もよく、自然素材で作られていますので体に良さそうな壁材というイメージがあるかもしれませんが、もちろんメリットばかりではなくデメリットもあります。
ここではそんな漆喰のメリットとデメリットについて、それぞれ詳しく説明していきます。
メリット
- 美しさを維持できる
- 耐火性がある
- 殺菌機能が期待できる
- シックハウス症候群を防ぐことができる
漆喰の大きなメリットは上記の4点です。
調湿性の高さに関しては、あくまで土壁と組み合わせることで調湿性が高くなるのであって、通常の漆喰には調湿性がほとんどありません。ただし、一部で調湿性を高めた商品なども販売されています。
機能面では耐火性と殺菌機能が挙げられますが、通常の家庭では万が一という場合にしか耐火性を意識しませんよね。このため、殺菌機能が高いという点が漆喰の機能面での大きなメリットということになります。
殺菌性に似ていますが、漆喰はホルムアルデヒドを吸収して分解してくれます。ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群を引き起こす要因のひとつで、シックハウス症候群にかかると、息切れ、目の痛み、頭やのどが痛む、などの症状がみられます。
そして、やはり魅力的なのは、その真っ白な美しさです。ほとんどメンテナンスしなくても、長期間白さを保てるのはお城や蔵を見れば一目瞭然です。
また、ベースが白ですので顔料を加えることにより、様々な色にアレンジできるのも漆喰のメリットといえます。
デメリット
- ヒビが入りやすい
- 施工に手間と時間がかかるためコストが高い
- 汚れが目立ちやすい
漆喰の壁にする際に注意したいポイントのひとつがヒビです。漆喰は空気中の水分の影響を受けやすく、小さく伸び縮みを繰り返します。その結果、状況によっては簡単にヒビが入ってしまいます。特に本漆喰のような自然素材で作られたものは、ヒビが入りやすいため施工に熟練した技術が求められます。
さらに、左官屋さんの腕によって仕上がりに違いがでやすい工事です。きれいに仕上げるには経験豊かな職人さんに依頼することになりますが、当然コストが高くなってします。壁紙でしたら1日作業で終わるところを、数日かけて作業するケースもありますので割高感は否めません。
メリットでもある白さは、生活の中においてはデメリットにもなります。汚れを取り除くのは簡単ですが、真っ白な壁ゆえに汚れが目立ってしまいますので、メンテナンスとはいかないまでもこまめな掃除が必要になります。
漆喰とよく比較される珪藻土って何?
漆喰によく似た壁材として珪藻土が挙げられます。
どちらも似たようなものだと思っている方もいるかもしれませんが、もちろん両者には大きな違いがあります。それでは珪藻土はどのような特徴があり、漆喰とどこが違うのでしょう?
漆喰は石灰岩から作られますが、珪藻土は珪藻が堆積してできた土から作られます。珪素は海藻と同じ藻類で、ガラス質を持っているのが特徴です。
漆喰はゆっくりと固まっていくという機能がありますが、珪藻土だけでは固まらないため、固化材を使用しています。この固化材によって、珪藻土の強度やカビの生えやすさが変わってきます。
珪藻土は漆喰よりもやや調湿機能が高いという特徴もあります。他にも、珪藻土のほうが原材料は安く、なおかつ施工しやすいため費用もおさえられます。一方で、漆喰ほどは耐久性がないため、お手入れが大変だというデメリットがあります。
漆喰と珪藻土のどちらがいいかというと、好みの違いとしか言えません。
土ならではの表情のある仕上がりを楽しみたい、というのであれば珪藻土が適しています。白くてツルッとした仕上がりがよいのであれば、漆喰がおすすめです。
漆喰には種類がある
漆喰の壁といっても、実はいくつかの種類に分類できます。どのような種類の漆喰があり、その特徴などについて詳しく説明していきます。ぜひ、ご自身の理想とする漆喰選びの参考にしてください。
本漆喰
漆喰というと、お城などに使われている白い壁を思い浮かべる方が多いと思いますが、伝統的な建物などに使われている漆喰はほぼ本漆喰です。本漆喰という名前からも分かりますように、本漆喰こそが正しく定義された本物の漆喰といえます。
厳密に言えば本漆喰に使用される原材料は「消石灰・麻の繊維・海藻を炊いて抽出したのり」の3つだけで、これ以外のものが含まれていると本漆喰とはいえません。
本漆喰をきれいに仕上げるには熟練の技術が必要ですので、限られた職人さんしか対応できません。このため仕上げを極めようとすると、どうしても非常に高額な費用がかかるため、壁にこだわりたい場合を除いて住宅で使われるケースは減ってきています。
土佐漆喰
土佐漆喰は名前の通り、土佐・高知で伝統的に使われてきた漆喰です。本漆喰との違いは海藻を炊いて抽出したのりを使わないという点です。原材料のワラスサを発酵させて、そこで発生した糖分がのりの役割を果たします。
施工当初はクリーム色ですが、時間が経つにつれて白色、もしくはほんのりと色づいた黄色へと変わっていきます。厚塗り仕上げが基本のため、通常の漆喰は1~2mm程度の塗り厚なのに対して、土佐漆喰は5~7mmも塗ります。さらにのりを使っていないため雨に強く、強度の高い漆喰として注目されています。
強度があるため、床材にも使用できるのが土佐漆喰の特徴でもあります。日の当たり方で色の変化が違いますので、時間とともに味が出てくる壁材ですが、実際に施工をしたことのない左官屋さんも多いため、どの業者でも施工可能ではないという難点があります。
既調合漆喰
現在の主流となっているのが既調合漆喰です。ハウスメーカーの漆喰はほとんどが、この既調合漆喰だと考えてもらってかまいません。本漆喰などは、現場で調合するのに対して、既調合漆喰は製造工場で調合されてから出荷されます。
工場で調合されているため、漆喰が安定しているという特徴があります。現場での負担も減り、左官屋さんの経験値に依存する部分が少なくなり、施工技術の習得も本漆喰に比べると楽になるため、施工費用が比較的安価におさえることができるという特徴があります。
自然の風合いを求めるなら本漆喰がおすすめですが、かといって既調合漆喰が悪いというわけではありません。
顔料を加えることで好みの色に仕上げることも可能ですし、ヒビ割れを防ぎやすくするなどのメリットもあります。本漆喰の廉価版という位置づけを考えている方いるようですが、既調合漆喰にしかない良さもあります。
西洋漆喰
漆喰と聞くと日本の伝統工法だと思われるかもしれませんが、実はヨーロッパでも漆喰は昔から使われてきた壁材のひとつです。一般的な西洋漆喰はモルタルのようなものなのですが、現在輸入されているものは日本の漆喰に近いものが増えています。
ただし、西洋漆喰は玉石混交の状態で質のいいものもあれば、ほとんど塗料と変わらないというようなものもあります。本物の漆喰ではなく、漆喰っぽく仕上げたいだけなら西洋漆喰でも問題ありませんが、伝統的な漆喰を望む場合には慎重に商品選びましょう。
また、西洋漆喰は西洋の乾燥した空気に合うように作られていますので、日本の高温多湿ではその効果を発揮しづらいという欠点もあります。どうしても西洋漆喰でないといけない場合を除いて、日本の建物には日本の漆喰がおすすめです。
漆喰の壁にすると費用はいくらかかる?
実際に漆喰の壁にするとなると、その費用が気になりますよね。手作業で行いますので、高額な費用がかかりそうですが、実際のところはどうなのでしょうか。漆喰壁で検索するとDIYで塗っている方もいますので、DIYで行うのと業者に依頼するのときの費用違いをみてみましょう。
DIYで行う場合
「DIYで本当に漆喰の壁ができるの?」、と思う方もいるかもしれませんが、DIYの経験があり、なおかつ仕上げをそれほど気にしないのであれば、自分で漆喰を塗ることはそれほど難しくありません。ちょっとしたペンキ塗りくらいの感覚で漆喰を塗ることができます。
このときにかかる費用は次のようになります。
漆喰20kg:4,000~15,000円
こて:1000円
20kgの漆喰で約15㎡を塗ることができますので、1㎡あたりで考えると300~1,000円程度です。ただし、漆喰は2度塗りが基本ですし、初めての方だとうまく作業できないことも考慮して、1㎡あたり1000円くらいがDIYの相場だと考えてください。
作業手順としては下記のようになります。
- 養生をする
- 漆喰を水に溶く
- 溶いた漆喰を壁に塗りつける(1回目)
- 乾いたら2度目の塗りを行う
必要になる原材料費はかなり格安なのですが、問題は塗るために手間と時間がかかるという点です。本漆喰ですと水に溶く作業が大変ですので、DIYで行うのであればすでに調合されている既調合漆喰を使用しましょう。
業者で行う場合
漆喰をDIYで行うと、仕上がりが期待通りにならないことがあります。さらに、自分で作業しているので工賃は発生しませんが、それだけ自分の時間を使うことになります。このため、忙しくて時間がないという人は業者に依頼した方が確実です。
業者に依頼する場合にかかる費用は、1㎡あたり3,000~4,000円前後だと考えてください。
実際には下地を整えるためさらに高額になることもありますが、単純に漆喰を塗るだけでしたらこの程度の費用で作業できます。6畳の部屋であれば9万~11万円程度です。
DIYで行うよりもやはり高額ですが、仕上げの状態が全く違います。きれいな仕上がりを求めるのであれば、業者に依頼することをおすすめします。
まとめ
自然な風合いで美しく仕上げることができる漆喰壁。新築でもリフォームでも導入の検討をしている人が多いと思いますが、漆喰がどういうものなのか、どのようなメリットとデメリットがあるのか、きちんと理解してから実行することが大切です。
予算に余裕があれば、業者に依頼して本漆喰を使用したいところですが、原材料費は安くても作業費が高くなるケースがあります。そのためにDIYで漆喰を塗る方もいますが、よほど器用な人でもないかぎり、美しい仕上がりにはなりません。
とにかく安価に漆喰壁にしたいのでなければ、確かな技術を持った職人さんがいる業者に依頼し、予算に合った漆喰壁を手に入れましょう。
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