障害者雇用促進法の改正
平成28年4月1日から、改正障害者雇用促進法が施行されました。
改正前との大きな違いは、対象となる障がい者として精神障害者も加えられたことと、雇用における障がいを理由とした差別の禁止が明記されたことです。 したがって事業主側の対応としては、多様な人々にとって働きやすい環境を整えていくことが求められています。
〈具体的な改正内容〉
・募集・採用、賃金、配置、昇進などのあらゆる面での差別の禁止
・個々の障がいに対する配慮など、合理的配慮の提供の義務付け
・相談体制の整備・苦情処理 紛争解決の援助、事業主の苦情解決の努力義務
内閣府は、自立と支え合いの共生社会の実現を目指し、この障害者雇用促進法改正により活発になったバリアフリーという考え方に合わせて、ユニバーサルデザインも同時に進めていくべきであると、「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」を掲げています。
現在日本では、少子高齢化が進み、体に不自由を感じる人は増加傾向にあります。 性別、体格の違いや、障がいがあっても、それを個性として認め、働きやすい社会を目指す、という考え方が広がっています。 全ての人たちに対応した、働きやすいオフィスを作るには、障壁を取り除くバリアフリーと、新しい障壁を生まないユニバーサルデザインが必要です。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
ユニバーサルデザインの考え方が世の中に浸透することで、事業主の方々はどのような人にとっても働きやすい環境が求められています。 理想的なオフィス環境を実現するためには、バリアフリーとユニバーサルデザイン、両者の違いを知る必要があります。
相違点① - 対象者の範囲が異なる
両者の違いは3つあります。 一つ目が対象者の範囲が異なることです。
・バリアフリー:高齢者、障がい者の限定された人たち
・ユニバーサルデザイン:年齢、人種も問わない、すべての人たち
バリアフリーの場合は、高齢者、障がい者という限定的な人たちのために作られるものです。 一方でユニバーサルデザインの場合は、高齢者、障がい者も含む、対象者を限定しない、すべての人たちが利用しやすいように作られているのです。
バリアフリーの対象は限定的な人々ですが、ユニバーサルデザインは全ての人々に当てはまるところがポイントです。
相違点② - 考え方の違い
簡単に表現すると、次のような考え方の違いがあります。
・バリアフリー:「障壁を取り除く」
・ユニバーサルデザイン:「新たな障壁を生み出さない」
もう少し具体的に、リフォームや家づくりの場面における例を見てみましょう。
・バリアフリー:「家族が年を取って玄関前の階段の昇り降りが不安なため、階段にスロープと手すりを設置」
・ユニバーサルデザイン:「子どもから老人、障がいがある方も昇り降りし易いように、設計時点からスロープと手すりをあらかじめ設置」
バリアフリーは「階段の昇り降りの不安」という障壁を取り除くといった考え方ですが、ユニバーサルデザインは「設計の時点からあらゆる人にとっての使いやすさ」といった視点に立っています。
これが両者の考え方の違いです。
相違点③ - 行政主導と民間主導
3つ目の相違点は、主導となって推進している団体の違いです。
障害者雇用促進法改正により、オフィスのバリアフリー化が義務付けられています。 一方、ユニバーサルデザインは民間主導型で進められていました。
現在は、別々に進めていくよりも、バリアフリー化と合わせて、ユニバーサルデザイン化を目指す考え方が広がっています。
オフィスのユニバーサルデザイン化
3つの違いを比較しても、リフォームや施工後の形にほとんど違いはありません。
それならば、高齢者、障がい者に限定せず、より多くの人が使いやすいオフィスを目指して、バリアフリーよりも、ユニバーサルデザインなオフィスを目指してみませんか?
そんな全ての人が使いやすいオフィスを作るには何が必要かをご紹介します。
階段にスロープ
車椅子の方や高齢者の方にとって、階段は不便で危険が潜んでいる場所です。 そこにスロープを設置することで、移動する際の障壁を取り除くことができます。
しかし車椅子で登るには急すぎることがあるので、ちょうどいい傾斜の角度を知っておきましょう。
バリアフリーのスロープの基準とされる水平面からの角度は、5度以下で1/12勾配です。 これが電動車いすでの自走、そして車椅子をサポートするのに適した傾斜と言われています。
※ 勾配とは
直角三角形をイメージしてください。
地面からの角度が45度、垂直部分と、水平部分が1:1の長さの場合、これを1/1勾配といいます。
地面からの角度が27度、垂直部分と、水平部分が1:2の長さの場合、これを1/2勾配といいます。
分母が大きいほど、緩やかな勾配ということになります。
例えば、段差全体が30cmの場所にスロープを取り付ける場合。 つまり、垂直部分が30cm。 これに対して必要な水平部分の長さは、1:12勾配なので、30cmの12倍、360cmが理想のスロープの長さとなります。
・設置にかかる費用の目安
歩行用スロープ:5メートルで約10万円
車いす用スロープ:30万ほど(歩行用より長く、緩やかであるため)
滑らない足元「床用グリップシート」
スロープには、コンクリート、石、レンガ、タイルなどの素材が用いられています。
どの素材であっても簡単に滑り止めとして使用可能な「床用グリップシート」を紹介します。
「床用グリップシート」の特徴は5つです。
・汚れにくい
・縮んだり、破れにくい
・高い耐久性と耐候性
・多少の凹凸でも貼り付け可能
・簡単に施工可能
駅構内や、ATMコーナーや街の至る所で目にするようになったのが「床サイン・グリップシート」。 屋外、屋内でも、様々な床材に対しても使用することができます。 滑りにくいものだけでなく、点字ブロックの代わりに使える「床用グリップシート」もあります。
・費用の目安 長方形タイプ 1枚(100m×100m):およそ3000円~
手すりの設置
手すりも設置することで、より安全性を高めましょう。 エントランス、スロープだけでなく、屋内にも手すりを設置することで足元が不自由な方でも安全に歩行する事ができます。
・費用の目安 手すりの設置:10万未満
参考:バリアフリー・介護リフォームの費用相場は? 補助金やメリットも解説
開閉しやすいドア
手動式の開閉扉は扉の可動域が大きいため、余裕を持ったスペースが必要です。 特に、車椅子の方にとっては通行しにくく、開閉するのに力が必要なので体が不自由な方にとっても不便な扉です。 この問題は自動ドアにすることによって解決できます。
・費用の目安
自動ドア工事:およそ38万円~
オフィスのレイアウト
車椅子の通行を考慮しすると、通路は90cm以上の幅が必要になってきます。 デスクとデスクの間の場合、着席している人がいることを考慮し、およそ180cm~200cm幅が理想といえるでしょう。 車椅子が通りやすだけでなく、オフィス全体としてもゆとりを感じることができます。
丁度よい高さのデスク
社団法人日本のオフィス家具協会(JOIFA)は事務机の高さを720mmを推奨しています。 その理由は3点あります。
・収納量のアップ
・働く人の平均身長の上昇
・働く人の多様化
高くなることによりもちろん収納量は増えます。 それだけではなく、1971年当時より人々の平均身長は高くなりました。 そして、車椅子の方でも、だれでも使いやすい高さが見直されました。 それが当時の机の標準的な高さ700mmから推奨される720mmへの変化です。
事務机に限らず、全てのデスクや棚などの高さの見直しが必要です。
まとめ:バリアフリーはユニバーサルデザインへの一歩
障害者雇用促進法の改正に伴い、バリアフリーやユニバーサルデザインの考え方が広まってきました。 オフィスの内装・設備に変更を加えていくことで、障壁を取り払いバリアフリーに、そして、新たな障壁を増やすことなく、誰にとっても利用しやすい環境を整備できるはずです。
障がい、年齢、性別関係なく、従業員が働きやすい空間を作っていきましょう。
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