バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
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「バリアフリー」とは、お年寄りや障害を持つ方が社会生活をする中で障壁となり得るものを排除すること、または弊害のないように施すことをいいます。
車いすを使用される方の場合だと階段はもちろん、わずかな段差を超えることも困難です。
足腰を悪くされ、杖を使用される方も同様です。
最近では多くの店舗にスロープが据え付けられており、そのような方々のためにバリアフリー環境が整っているのを多く見受けます。
混同されやすい言い回しに「ユニバーサルデザイン」があります。
バリアフリーが現状を改善するのに対し、ユニバーサルデザインは始めから介護を必要とする方のための仕様を施します。
新築設計の段階で介護を必要をする方のための施しをする場合は、「バリアフリー」とはいいません。
住宅内のバリアフリー
ご家庭に介護を必要とされる方がいる場合、住宅をバリアフリーにリフォームする必要性があるといえます。
住宅の中のどのような部分に必要となるのか、一例をご紹介していきましょう。
玄関・段差
住宅玄関の多くは、段差があることがほとんどです。
段差が多くあればスロープに変え、わずかな段差であれば滑らかにします。洗面台
洗面台の下には、収納棚が据え付けられている場合があります。
収納には便利ですが、車イスに座ったまま使用する時には邪魔になってしまい、洗面ボウルに届きません。
収納スペースを撤去し、洗面台の下にスペースを確保することで解消できます。トイレ
足腰を悪くされている方の場合、立ったり座ったりの動作は負担がかかります。
トイレ内の適切な場所に手すりを設置するだけでも、負担を軽くすることができます。浴室
足腰を悪くされている方はトイレと同様に、浴槽をまたぐ動作は大きな負担になります。
またぐ高さを低くしたり、浴槽と同じ高さの椅子を設置します。
他には、滑りやすい浴室内の転倒事故の対策をしておきたいです。
タイルや人工大理石といった滑りやすい材質を使用している場合は、床材を変えるリフォームを検討しましょう。
また、従来の個浴式以外にも、車いすのまま入浴できるユニットバスも販売されています。
バリアフリーにおける浴室リフォームの必要性
お風呂は身体を清潔に保つだけでなく、心身ともにリラックスをさせる効果もありますが、介護が必要になったことでお風呂に入りたくても浴槽につかることを断念される方もいます。
介護が必要な方の状態に合うように浴室の構造をリフォームすれば、浴槽に入ることが可能になります。
浴室での危険
要介護認定を受けながら、お一人での生活をしている方もいます。
浴槽をまたぐために手すりがなければ、転倒をして怪我につながる可能性があります。
大きな浴槽はリラックスできますが、大きすぎるために体が沈み込みすぎてしまう危険もあります。
適切な環境にリフォームをすることで、浴室で起こり得る多くの危険を遠ざけることができるのです。
介助をする方の視点
バリアフリーリフォームにおいては、介護を必要としている方に合わせたリフォームだけでなく、介助をする側に人に対する視点も重要になります。
介助をする側の人は、相手の動きをサポートできるように力を入れたり、大きな動きを必要とします。
それに対して介助を受ける方は、介助をしている方に身を任せる必要があるので、両者ともに安全でなくてはなりません。
介助を受ける方のお身体の状態にもよって施工は変わりますが、介助をする方の視点も大切にしましょう。
バリアフリーを行うことで浴室の安全性を高められる
介護が必要な方だけではなく、介助する方のためにも浴室のバリアフリーリフォームが重要になることをご紹介しました。お風呂場に潜む危険が分かると、どのようなリフォームが必要になるか見えてきます。
出入り口
年齢と共に足が上がりにくくなり、少しの段差でも転倒しやすくなります。浴室の出入り口に段差がある場合、段差につまずき、転倒するリスクが高いです。扉を開けて浴室内に入る際、扉を開ける動作に集中していて段差に注意が向いていないことで転倒につながります。出入り口の段差があり過ぎると感じたり、何度か段差につまずいた経験があれば、バリアフリーリフォームをおすすめします。
深い浴槽
古い浴槽には浴槽が深いタイプが非常に多いです。深い浴槽ですと、浴槽をまたぐだけでも体力を使い、体の力の入れ方によっては転倒につながります。浴槽内で溺れてしまう危険もあるため、浴槽に入りにくいと感じたら、リフォームを検討してみてください。
しゃがむ・またぐなどの動作時
出入り口の段差や浴槽に入る際にまたぐだけでなく、洗い場のイスや浴槽に座る際にしゃがむなど、お風呂では様々な動作が行われます。足腰が弱くなってくると、手すりなどの支えがない状態でこれらの動作を行うのも一苦労で、動作中にバランスを崩すと転倒する危険があります。お風呂場で動作しにくい箇所を洗い出しておくと、手すりを設置すべき所などが見えてきます。
濡れた床での転倒
最近のユニットバスの床は濡れても乾きやすく、滑り止め代わりになるようなパターンが施されていますが、残った石鹸カスなどで滑って転倒する危険はあります。タイル貼りの床は水が残りやすいため、滑りやすいです。ご高齢者だけでなくお子様が転倒してしまうと骨折するリスクが高く、打ちどころが悪いと最悪なケースを引き起こしかねません。乾きやすく水はけの良い床材やパターンの床へのリフォームをおすすめします。
ヒートショック
ヒートショックとは、温度の大きな変化により血圧が急激に変動することです。冬場の脱所や洗い場は非常に寒いため、血管が収縮して血圧が上がります。この状態で暖かいお風呂に入ると、今度は血管が広がり血圧が急降下します。これは、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。血圧の変動は失神を引き起こす可能性もあり、浴槽内で失神してしまうと溺れる危険があります。これらの防止には、脱衣所や浴室内を暖かくすることが大切です。
浴室のバリアフリーリフォームには種類がある
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お風呂は介護を必要とされる方に合うように、バリアフリーへリフォームする必要があります。
ここから、浴室のリフォーム方法をご紹介していきます。
ユニットバスのメリット
ユニットバスとは、天井、壁、床、浴槽が一体化している浴室のことをいいます。
トイレや洗面台が一緒の浴室が、ユニットバスという認識が一般的に広まっていますが、トイレが別であっても上記の定義であればユニットバスと呼びます。
メリットはリフォームしようとした際に、全体を一括で行えることです。
通常の浴室であれば、天井、壁、浴槽は単体で商品を選ぶ必要があります。
しかしユニットバスには決められた規格があり、規格が同じであれば広さを変えるなどの大掛かりなリフォームは必要ありません。
浴室全体を商品として販売しているので、リフォーム費用も比較的安価です。
介護用ユニットバスへのリフォーム
ユニットバスの特徴をご紹介しましたが、介護で使いやすいユニットバスにするためにはどのようなリフォームが必要になるかご紹介します。
出入りしやすい浴槽にする
一般的に普及している浴槽の高さは60cm程度がほとんどです。
身体が不自由な方にとっては想像以上に負担となる高さですので、浴槽をまたぐ際に大きく足を上げると転倒する可能性があります。
そこで浴槽の高さを考える際に重要なのは、利用する方の体格に合っていることです。
膝下の長さと同等程度が適切とされていますので、平均的には40cmが推奨されています。
浴槽の1/3程度を床に埋め込んだ「半埋め込み式」と呼ばれる設置方法にすれば、浴槽の立ち上がりが低くるため出入りしやすく、安全性が高まります。浴槽自体のリフォームが難しければ、ステップを浴槽の縁に置いておくだけでも出入りがラクになります。
縁の広い浴槽も、出入りをサポートします。浴槽に広めの縁があれば、そこに腰をかけることができますので、座った状態で出入りできるようになります。
浴槽に傾斜があれば浴槽の深さを浅くできるため、洗い場との段差を小さくすることが可能です。浴槽が浅くても肩まで浸かることはできますので、安全に浴槽に入れてゆったり湯船に浸かれる、より快適なバスタイムとなります。
手すりを設置する
浴槽の高さが適切になっていても、またぐ際に掴まる部分があることも重要です。
浴槽のまたぎ方も人それぞれですので、利用する方の動作に合わせて手すりを設置しましょう。
お風呂に入る時と、上がる時に捕まる部分は異なるので、それぞれに対する設置が必要になります。
浴槽周辺の他には出入り口付近やシャワー横の設置がおすすめです。出入り口の手すりは転倒の軽減、シャワー横の手すりは立ち座りなどの動作をサポートするのに有効です。シャワー横の手すりは縦に伸びるものがおすすめです。
シャワーキャリーを設置する
シャワーキャリーとは、浴室用の車いすです。
座ったまま動かすことができるので、浴槽をまたぐ時以外の移動が安全にできます。
シャワーキャリーを使用すれば、浴槽をまたぐ時に立ち上がる動作を一部省略できます。
浴槽に平行して寄せることで、座ったまま足を浴槽に入れることができるからです。
バスリフトを取付ける
バスリフトとは、電動で浴槽への乗降が可能な福祉用具です。
施工業者に依頼してリフォームで取付ける設備というよりは、ご自身で購入して使用する介護器具といった扱いです。
浴槽に浸かるとリラックスできる反面、長時間の入浴は疲労を招く場合もあります。
浴槽から立ち上がれないというトラブルがあっても、バスリフトの電動乗降で安全に出入りが可能です。
介助する方の負担も大きく軽減できるので、ユニットバスへのリフォームの際には同時にご検討をお勧めします。
扉を引き戸か折れ戸にする
引き戸であれば出入り口のスペースを広く確保することが可能となるため、車いすでも浴室の出入りをスムーズに行えます。引き戸は開閉に力が必要ないのも特徴で、扉を開ける際にバランスを崩して転倒してしまうことを防げます。
浴槽の扉が内開きですと、万一浴室内で事故があった場合、外から開けるのが大変です。引き戸であればこの心配はありませんが、扉を引き込むためのスペースを確保できなければ設置は難しいです。いつでも外から開けることが可能な扉として、折れ戸もおすすめです。ただし、折れ戸は扉を開ける際の扉と扉の間に指を挟まない様注意が必要です。どのタイプの扉でも、割れにくいガラスにすることで、さらに安全性が向上します。
出入り口の段差を2cm以下にする
出入り口の段差は転倒の多い所ですので、完全に段差を無くすか、2cm以下にとどめておくことで、転倒のリスクを軽減できます。ただし段差を無くすと脱衣所側に水が漏れやすくなるため、新たに排水機能を設置する必要があります。
洗い場には水を流れやすくする傾斜がついていますが、脱衣所との段差が無くなることで傾斜だけでは不十分になります。出入り口をリフォームする場合は、水漏れしないように業者と相談しながらリフォーム内容を決めましょう。
安全性の高い床材を使う
タイルは濡れていると滑りやすいだけではなく、タイルが硬いことで転倒した際は大きなケガにつながりやすいです。また、表面が冷たいためヒートショックの危険も高いです。バリアフリーを考えると、滑りにくい加工がされており、水はけが良く、断熱性に優れて、転倒時の衝撃を吸収してくれる柔らかい床材がおすすめです。
浴室暖房乾燥機の設置
ヒートショックの防止には脱衣所とお風呂場との温度差を小さくする必要があります。脱衣所もお風呂場も暖かくしておくことで、温度差は小さくなります。お風呂場を暖める設備に浴室暖房乾燥機がありますが、脱衣所には床暖房やエアコン、ストーブなどを設置すれば脱衣所も暖まります。浴室暖房乾燥機は搭載されている機能が商品によって異なり、費用も変わってきます。浴室を暖める以外に必要な機能と予算とのバランスを考えて商品を選びましょう。
浴室発信機の設置
浴室はプライベートな空間ですので、介護が必要なご家族の方でも一人で入浴可能であれば、入浴中ずっと見守っているわけにもいかないでしょう。しかし、万一の事態が発生したらすぐに浴室に駆けつけたいですよね。このような時は、浴室に設置できる通報装置があると安心です。引きひもを引くタイプやボタンを押すタイプなど、操作方法の異なる商品がいくつかありますので、操作しやすく感じられるものを選びましょう。
介護におけるお風呂のバリアフリーリフォームの施工事例
介護で重要となるバリアフリーリフォームの内容をご紹介しました。実際にリフォームを依頼する際にはどれくらいの費用がかかるのか、施工事例と共にご紹介します。施工事例を参考にすると、どのようなリフォームが必要になるのかも見えてきます。
東京都足立区のユニットバスへのリフォーム施工事例
施工情報
施工業者
株式会社ファミリー工房
施工月
2014年7月
施工総額
約81.2万円
【Before】
【After】
出典:株式会社ファミリー工房
こちらの事例では、介護助成金を利用して、浴室の水漏れを直すために在来工法からユニットバスに変更しました。
鳥取県西伯郡南部町のバリアフリーリフォーム施工事例
施工情報
施工業者
住宅再生工房マツヤ(株)松和建設
施工月
2015年12月
施工総額
約160万円
【Before】
【After】
こちらの事例では、浴槽の縁に腰かけスペースがあったり、握りバーの設置された、介護の必要な方でも安心してお使いいただけるTOTOの「サザナ」に取り替えました。浴室の出入り口の10cmの段差を解消したり暖房換気扇を設置するなど、様々なバリアフリーリフォームが行われています。
福岡県小郡市のバリアフリーリフォーム施工事例
施工情報
施工業者
株式会社匠和美建 福岡南支店
施工月
2016年7月
施工総額
約100万円
【Before】
【After】
こちらの事例では、手すりなどで安全性を向上させることに加え、明るい仕上げ材などを提案することで、心地良さを感じられるお風呂場となりました。
神奈川県小田原市のバリアフリーリフォーム施工事例
施工情報
施工業者
グッドリフォーム湘南
施工月
2016年5月
施工総額
約670万円
【After】
出典:グッドリフォーム湘南
こちらの事例は、介護施設のバリアフリーリフォームで、お風呂場以外にもトイレなどもリフォームしているため、施工額は高くなっています。
浴室バリアフリーリフォームの補助制度について
バリアフリーのリフォームを検討している場合は「高齢者住宅改修費用助成制度」を利用できる場合があります。ご家庭に要介護認定を受けている方がおり、一定額のリフォームを行うことが前提です。助成金の限度額は工事費用最高の20万円で、1割負担をすれば施工が可能となります。
手すりの取り付けや段差の解消、滑りにくい床への変更や扉の交換などが支給対象となります。お風呂のバリアフリーを検討する際に、住宅全体のバリアフリーリフォームを検討される方は多いです。お風呂以外では洋式便器への交換なども対象となります。これらを行うにあたり必要となる工事も支給対象です。
お風呂のリフォームでは、バリアフリーリフォームと合わせて壁のデザインの変更などのリフォームを行うこともあるでしょう。バリアフリーリフォームとその他のリフォームの合計が20万円以内であっても、支給対象はバリアフリーリフォームのみで、それ以外の工事は実費で支払う必要があります。対象のリフォームと対象外のリフォームについては、詳しくは住まいの市町村にある介護保険課へお問い合わせください。
補助を受けるためには工事前に必要書類を、工事完了後には工事完了を証明するための書類を市区町村に提出しなくてはなりません。
工事前には
- 支給申込書
- 住宅改修が必要な理由書
- 工事見積書
- 写真又は簡単な図を用いた完成予定の状態が分かるもの
を提出する必要があります。
工事完了後には
- 領収書
- 工事費内訳
- 完成後の状態を確認できる書類 (リフォーム箇所の工事前と工事後の状態の分かる写真で、撮影日が分かるものが好ましいです)
を提出する必要があります。
リフォームを行った住宅の所有者が当該利用者ではない場合は、工事後に承諾書の提出も必要になります。
自治体によっては独自でバリアフリーを対象にした補助金交付制度を行っていることがありますので、一度お住まいの市区町村の役所に相談してみることをおすすめします。
まとめ:いつまでもバスタイムを楽しむために
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介護が必要な方が使いやすいお風呂にするためのバリアフリーリフォームについてご紹介しました。お風呂場には転倒のリスクが潜んでおり、脱衣所との温度差からヒートショックの危険が高いため、安全に使用するためにはバリアフリーは欠かせません。
バリアフリーリフォームでは出入り口の段差を小さくしたりまたぎやすい高さの浴槽にする以外にも、しゃがんだりまたいだりといった動作の必要な箇所に手すりを設置したり、滑りにくく柔らかい安全な床材を使用したり、暖かい状態を作る浴室暖房乾燥機の設置をするといったことが行われます。万一浴室内で事故が発生した際には、すぐに駆けつけることができるように扉を外からでも開けやすい引き戸や折れ戸にしたり、浴室発信機の設置なども行われます。
リフォーム内容によっては助成金が支給されますので、費用でバリアフリーリフォームを諦めることのないよう、お住まいの市区町村の役所に相談に行くことをおすすめします。バリアフリーリフォームで安全性を向上させ、さらに快適なお風呂場をつくりましょう。
いかがでしたでしょうか。なるべく費用を抑えてリフォームをしたい方へお知らせです。リフォマは中間業者を介さずに、ご要望に合う専門業者を直接ご紹介します。中間マージンが上乗せされないため、管理会社や営業会社などより安く費用を抑えることができます。下記のボタンからお気軽にご相談ください!
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