鉛管(えんかん)とは何か
水道管の種類には銅管や鉄管、塩ビ管などがありますが、1940年代に塩ビ管が普及し始めるまでは鉛管と呼ばれる鉛でできた管が使われていました。鉛は加工性が高く、欧州などでは一般的な素材ということで日本の水道でも広く使われていました。
ところが1950年頃から、専門家から鉛の危険性についての声が上がり始めます。そもそも鉛は有害物質で、人体に取り込むと中毒を起こします。鉛は食べ物にも含まれていますが、それらは微量であるのでそれほど問題にはなりません。
基本的には鉛管の表面に酸化被膜と呼ばれる薄い膜ができるため、鉛が検出されることはないとされています。ところが、鉛管が傷つくとそこから鉛イオンが水に含まれます。この量も微量ではありますが、水を飲んだり、料理に使ったりすることで、徐々に体内に蓄積されて鉛中毒になる恐れがあります。このため、現在では新規の水道管に鉛管を使用することは禁止されています。
鉛管によって引き起れる症状
ちなみに鉛管の水道を使い続けることによって、下記のような症状が引き起こされるといわれています。
- 頭痛
- 脱力
- 貧血
- 知的障害
- 胃腸障害
- 人格の変化
- 歩行の協調障害
鉛は脳や神経、内臓などに影響を与えることが知られており、特に成長期にはその影響が大きくなるため、小さな子どもほど鉛中毒になってしまいます。難しいのは軽度の鉛中毒では症状が見られないということで、気がついたときには重症になっているというケースも珍しくありません。
鉛管が使用されている可能性がある場所
現在は鉛管の使用が禁止されており、なおかつ自治体によって、工事が困難な場所を除いてほとんどの鉛管が安全な素材の管に取り替えられています。ただし、取り替えられているのは自治体が管轄している水道管で、各家庭に引き込まれた水道管のうち10%以上が鉛管として残っているといわれています。
鉛管がある可能性が高い場所は、1989年以前に建てられた建物です。鉛管の使用を禁止した時期は自治体によって違いますが、国が鉛管使用禁止通知を出したのが1989年です。このため1990年以降に建てられたり、増改築時に水道管を交換したりした家に関しては、鉛管が使われていることはないと言っていいでしょう。
具体的な使用箇所としては、水道メーターから蛇口までの間での、水道メーターと水道管の接続部、水道管の曲がり部などに採用されています。ただし、水道管は壁や床に隠れて配管されていることが多いため、使われているかどうかは専門家に調べてもらう必要があります。
中古住宅を購入するときは、鉛管ではないか確認が必要
新築の家を購入する場合や、これから家を建てるという場合には鉛管について考える必要はありませんが、1989年以前に建てられた家を購入する場合は、鉛管を使っているかどうかの確認が必要になります。
それでは、どこを確認すれば鉛管が使われているかどうか分かるのでしょうか?ここでは、鉛管の確認方法についてご紹介します。
鉛管が使用されているか確認する方法
出典:株式会社ABC
まずは水道メーターのボックスを開けてみましょう。水道メーターや止水栓に繋がっている管が鈍い灰色をしていたら鉛管です。腐食防止のためにテープなどを巻いていることもありますので、それらを剥がして確認してください。
また、水道メーターに使われていなくても、他の箇所にも鉛管が使われている可能性もあります。見逃しのないように、自治体の水道課などに問い合わせして、図面を確認してもらいましょう。
鉛管の交換費用は水道局の補助金でまかなえる?
国には鉛管の使用をゼロにするという目標があります。このため、お金がなくて交換できないということのないように、対象工事の一部に対して助成するために、自治体が補助金や助成金を設けています。
購入を考えていた家に鉛管が使われている場合はとても助かる制度ですが、利用するにはいくつかの制限があります。どのような制限なのかを見ていきましょう。
水道工事費を補助金で全てまかなうのは難しい
補助金があるなら、自己負担なしで交換できると期待した方もいるかもしれませんが、この補助金には下記のような制限があります。
- 水道メーターから蛇口までは家主負担
- 工事見積の1/2まで(上限あり)
補助金が適用されるのは、道路に埋められている配水管や共同給水管の分岐から水道メーターまでに限られます。水道メーターに接続されている管も対象ですが、その先から蛇口までに鉛管が使われている場合には家主の全額負担になります。
また、適用範囲内であっても工事見積の半額までしか負担してもらえません。それも10万円や15万円といった上限がありますので、水道工事費をすべて補助金でまかなうことはできないといっていいでしょう。
鉛管以外の安全の材質の配管について
鉛管はそのままにしておくわけにはいきませんので、別の素材で作られた水道管を選ぶことになります。ここでは、水道管にどのような素材があり、それぞれの素材の特徴などをご紹介していきます。
塩ビ管
塩ビ管の正式な名前は硬質ポリ塩化ビニル管で、施工性が高く耐食性や耐薬品性に優れています。VP管とVU管の2種類があり、VP管は給水管や集合住宅の排水、VU管は排水管に使われます。いずれも色がグレーで、安価で入手性が高いという特徴があります。
メリット
- 錆びない
- 耐食性・耐薬品性に優れている
- 施工性が高い
デメリット
- 熱に弱い
- 強度が低い
ポリエチレン管
ポリエチレン管にはいくつかの種類がありますが、給水用には水道用ポリエチレン二層管(PE管)や架橋ポリエチレン管(PEX管)が使われます。樹脂製ですので可とう性が高く曲げて使うこともできる上に、長尺管が使用できるということで、水道管として広く使われています。
メリット
- 接続に専用工具や接着剤がいらない
- 曲げて使うことができる
- 施工しやすい
- 耐熱性がある
デメリット
- 日光に弱い
HIVP管
HIVP管の正式名称は水道用耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管です。名前からも分かるかと思いますが、塩ビ管のVP管の耐衝撃性を高めたもの(High Impact)になります。塩ビ管との見た目の違いは色にあります。塩ビ管はグレーですがHIVP管は濃紺色を使っています。塩ビ管よりも高価ですが、外圧に強いため埋設部などに採用されます。
メリット
- 錆びない
- 施工しやすい
- 強度が高く割れにくい
デメリット
- 温度変化に弱い
- 給湯管に使えない
- 塩ビ管よりも高価
銅管
銅管は銅で作られた管で、熱に強いため給湯管として使用されています。加工性に優れていますが、接続をするのにはんだごてなどの技術が必要になります。また、金属管ですので、長期間使っていると局部腐食によってピンホール(小さな穴)ができ、そこから水漏れする可能性があります。
メリット
- 熱に強い
- 加工しやすい
- リサイクルできる
デメリット
- 接続をはんだごてで行う必要がある
- 局部腐食を起こして水漏れする可能性がある
- 価格が高い
まとめ
鉛管は長期間使用することで、健康被害の恐れがあります。すぐに鉛中毒になるということはありませんが、築30年以上の中古住宅を購入するときは、鉛管を使っているかどうかの確認はしておきましょう。もし鉛管が使われていた場合は、自治体の補助金を使って安全な管に交換してください。
ただし、水道メーターから蛇口までの工事費用は家主負担になります。購入予定の中古住宅に鉛管が使われていたときは、その交換費用も頭に入れておきましょう。自分で判断が難しい場合には、自治体の水道課などに問い合わせて調べてもらうのが確実です。
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