PS(パイプスペース)とは何か
まずは基本的なことから説明しましょう。PS(パイプスペース) というのは名前のとおり、「配管が通る空間」のことです。マンションの見取り図には「PS」と表記されていて、メインの給水管や排水管が建物内に配管され、各部屋ごとに分岐していきます。
例えば5階建てのマンションなら、1階から5階まで縦にメインとなる管を通します。その管をむき出しにすると音もうるさく、ぶつかったときに危険ですので、周りを壁で囲っています。この空間のことをPS(パイプスペース) と呼んでいます。
PS がどこにあるのかは、マンション毎に違います。マンションによっては建物の外側に設けてあることもありますが、より効率的に使えるようにするために、トイレやキッチンなどの水回りの近くに設置していることもあります。
間取り変更のリフォームをする際に重要なポイントは、「PS は動かせない」ということです。一軒家であれば配管を直すということが可能ですが、マンションでは、「不便だから別の場所に移動させる」ということができません。このため、間取りを変更したい空間にPSがある場合は、それを動かさないレイアウトを考える必要があります。
マンションのPSと水回りの設備は重要な関係にある
マンションの間取り変更リフォームをするときには、PS(パイプスペース) だけでなく、水回りとの位置関係も気にしなくてはいけません。給水管は圧力を使って給水しますので。PS から多少離れていても問題ありませんが、排水は位置関係が非常に重要になります。
キッチンや洗面所、浴室、トイレなどの排水は重力を利用しています。例えば、床下まで伸びた配管は傾斜をつけて、PS にあるメインの排水管に繋げます。傾斜があることで排水が逆流することなく流れていくのです。
マンションの排水に必要な勾配とは?
排水に必要な勾配は1/50(1mで2cm)以上で、それ以下の勾配ですと排水が上手く流れません。上手く流れないと、排水管に汚れがこびりつきやすくなり、詰まりを引き起こしすなどトラブルの原因になります。
さらに、重要になるのが各設備とPS(パイプスペース) との距離です。マンションは設計の段階で、排水管の勾配を考慮したレイアウトを行っています。ところが間取り変更によってキッチンとPSを離してしまうと、計算どおりに排水できなくなります。
メインとなる排水管との接続位置は変えられませんので、キッチンまでの距離が2倍になると、キッチンからPS までの傾斜による高さも2倍必要になります。これまで6cmの高低差だったとしたら、12cmにしなくてはいけません。
床下の高さに十分な余裕があれば問題ありませんが、ほとんどのマンションではそれほど余裕のある設計にしていませんので、無理につなごうとすると傾斜を緩くするしかありません。そうなると、先程お伝えしましたように排水が流れにくくなって、詰まりの原因となります。
設置場所によっては床を高くする必要がある
どのリフォーム会社でも、トラブル回避のために緩い勾配になるような配管工事は断られます。ただし、距離が遠くなる間取り変更が絶対にできないかというと、そうではありません。床下に十分なスペースがないのであれば、床を高くすれば問題が解決するからです。
キッチンをPS(パイプスペース) から離してレイアウトする際は、10~20cm程度床を嵩上げしてあげれば、それだけ排水管に傾斜をつけることができます。もちろんキッチン以外の場所でも同様です。必要なだけ床を高くすればレイアウトの自由度が増すのです。
ただし、床を高くするための費用が発生しますし、それだけ天井が近くなります。間取り変更は可能でも、そのようなデメリットがあることもしっかりと頭に入れておきましょう。予算に余裕がないというのであれば、間取り変更をするにしても、排水位置があまり変わらないでレイアウトにするのがおすすめです。
マンションの水回りリフォームで注意すべきこと
マンションのリフォームでPS(パイプスペース) がどれくらい重要なのか、ここまでの説明で理解してもらえたかと思いますが、注意しなくては行けないポイントはまだまだあります。
ここでは、マンションリフォームで注意すべき、3つのポイントをご紹介していきます。
トイレとお風呂の排水
PS(パイプスペース) には排水配管が通っていて、キッチンなどの排水はそこにつながっているとお伝えしましたが、正確にはトイレの排水だけは汚物を流すため、専用の排水配管が設けられています。そしてお風呂やキッチンなどの排水をそこに流すことはできませんし、反対にトイレの排水を通常の排水配管に流すこともできません。
また、トイレの排水は「床排水」と「壁排水」の2種類があり、壁に排水口の接続部が出ているときは、すぐ近くにメインとなる排水配管が通っている可能性があります。この場合、トイレの位置を動かすことができません。向きを変えるくらいのことはできますが、全く違う場所にトイレをレイアウトすることは困難だと覚えておきましょう。
浴室も間取り変更が難しい設備のひとつです。マンションの浴室はユニットバスが使われていますが、無理に配置すると配管の勾配が緩くなるので、当然リフォームできません。トイレもお風呂も絶対NGというわけではありませんが、排水を考えると基本的には大きく動かさないほうがいい設備です。
DSの位置
古いマンションのリフォームをするときは、DS(ダクトスペース)についても考慮する必要があります。最近のマンションは、各部屋ごとにキッチンや浴室換気扇の換気口がついていますが、古いマンションは煙突のような空間を建物内に設け、そこで排気を行っています。
キッチンや浴室、トイレなどからの排気ダクトのルートを確保するため、古いマンションだけでなく各部屋に換気口がついているマンションでも、DSを動かすことはできません。また、新築時に強度計算を行っているため、間取り変更でキッチンを別の場所に動かすと、換気扇から換気口までのルートを梁が邪魔することがあります。
建物の強度が下がるので新規で梁に穴を開けることはできませんし、かといって梁の下にダクトを通そうとすると、排気中の水分がそこに溜まってしまいます。仮に梁の問題を解決できても、部屋の天井に排気ダクトがむき出しになって這うことにあり、見た目がよくありません。
間取り変更をするときに、排水について考慮するのはもちろんのこと、排気ダクトのルートについてもしっかりと頭に入れておいてください。排気ダクトは天井裏を通っていることも多く、自分でルート確認が難しいという場合は、専門知識のある業者にチェックしてもらいましょう。
水回りの設備が離れていると費用がかかる
間取り変更リフォームをする場合、水回りを大きく変えなければ、それほど費用は高くなりませんが、PS(パイプスペース) から遠くなると、床を上げるなどの追加工事が発生するため、どうしても費用が高くなってしまいます。
配管工事は資格を持った人が行う必要があり、リフォーム会社によっては外注に依頼することになるため、中間マージンなどの関係で工事費用が高くなりがちです。
使い勝手を良くするために、間取り変更をするというのはとても魅力的ですが、マンションや賃貸物件の場合はPS などの制約もあり、自由にレイアウトするとなると、リフォーム費用が高額になります。
このため「ちょっと気分を変えたい」という程度での間取り変更は、あまりおすすめできません。そもそもマンションの場合は、PSに関係なく間取り変更ができないケースがあります。それについては次章で詳しく説明します。
マンションでは水回りの設備が移動できないことがある
水回りをPS(パイプスペース) から遠くするようなリフォームは、作業的にも難しく工事費用も高額になることは、ここまでの説明で理解してもらえたかと思います。ただし、お金を掛ければ解決できるわけではなく、そもそもキッチンなどの水回りが移動できないことがあります。
- 管理規約で禁止されている
- 築年数が古いマンションでは移動が難しい
この2つが水回りを移動できない理由です。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
管理規約で禁止されている
マンションには管理規約というものがあります。内容はマンションによって違いますが、どこまでが専有部分(自分のスペース)かという線引や、共有部分の取り扱いなどが記されています。この管理規約により、PS(パイプスペース) を動かすことができないのです。
管理規約によっては、水回りの移動を禁止しているマンションもあります。さらに、水回りの移動を禁止していなくても、壁の撤去が認められていないケースもあります。いずれにしても、管理規約でリフォームができないと定められているのであれば、間取り変更はできません。
また、管理規約で規定されていなくても、リフォームする際は管理組合の承認が必要というところもありますので、マンションのリフォームをするときは、最初に管理規約についてきちんと把握することから始めてください。
検討を進めてから管理規約によってリフォームできなかった、というのでは時間が無駄になってしまいます。管理規約を読んでも分からないというときは、管理組合に相談するか、リフォーム会社の担当者に目を通してもらい、できることとできないことの判断をしてもらいましょう。
築年数が古いマンションでは移動が難しい
最近のマンションはリフォームやメンテンスを考えて、二重床構造になっています。建物として床下に配管できるだけの空間を設けて、その上に生活するための床を設置しています。この場合、空間の高さを利用しての水回りの移動をしたり、床を高くして空間の高さを維持することができます。
ところが、古いマンションでは配管が建物の床の下(階下の天井裏)にあります。この場合には、配管を動かすには階下での作業が必要になってしまいます。もちろん、他の人の専有部分ですので、許可を取らなくてはいけませんし、余程のことがない限りまず認めてもらえません。
そうなると、排水管の接続部が固定されてしまいますので、水回りの移動が物理的に不可能になります。築30年以上の物件によくあるタイプですので、古いマンションで暮らしている場合は、マンションの図面を見せてもらい配管がどこを通っているか確認しましょう。
図面が入手できないようであれば、管理組合に「床スラブ上配管」か「床スラブ下配管」か、どちらの構造になっているのか確認してください。床スラブ上配管であれば移動可能ですが、床スラブ下配管だった場合は水回りの移動が難しいかもしれません。
マンションのパイプスペースは有効活用できる
出典:Panasonic
間取り変更リフォームをする場合、PS(パイプスペース) は厄介な存在ではありますが、これを有効活用できるかどうかが、リフォーム会社の腕の見せどころでもあります。部屋の真ん中にあるような場合にはデザイン性の高い大黒柱のように見せることもできますし、全面に鏡を貼れば、空間を広く見せることもできます。
また、最近のマンションは部屋の凹凸をなくすために、PSの周辺を壁で覆って、飾り棚や収納スペースにすることも可能です。動かせないからこそ、自由な発想で有効活用する方法を考えてみるのもよいでしょう。
まとめ
一戸建てのリフォームと違い、賃貸物件などマンションのリフォームには様々な制約があります。その中でも水回りは、動かすことができないPS(パイプスペース) があるため、どこでもレイアウトできるわけではありません。
ただし、そのようなときに魅力的なプランを提案するのがリフォーム会社の仕事です。様々なリフォーム実績がある会社に相談すると、素人では想像つかないような方法で、素敵な空間に仕上げるためのプランを考えてもらえます。
マンションで間取り変更リフォームをする場合は、ある程度のイメージが決まった段階で、リフォーム会社に相談してみましょう。このとき予算も決めておくと、その範囲内で収まるように考えてもらえます。優良な業者に相談しながら、満足度の高いリフォームを目指してください。
いかがでしたでしょうか。なるべく費用を抑えてリフォームをしたい方へお知らせです。リフォマは中間業者を介さずに、ご要望に合う専門業者を直接ご紹介します。中間マージンが上乗せされないため、管理会社や営業会社などより安く費用を抑えることができます。下記のボタンからお気軽にご相談ください!
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