2017年12月18日

オフィス退去時の原状回復の範囲とポイント

オフィスに限らず、住宅用の賃貸物件も、退去するときには部屋を借りたときと同じ状態にして返さなくてはいけません。ただし、オフィスと住宅では「どこまで戻せば同じ状態なのか」という点で違いがあります。このことを認識していないと、退去時に敷金の返金でトラブルになります。ここでは、オフィス退去時の原状回復をどこまでの範囲で行うべきかについて説明します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • メールで送る

基本的な原状回復の範囲

出典:photo-ac.com

原状回復には様々な解釈がありますが、もっともシンプルな考え方は「借りたときの状態に戻す」ということです。どこまで戻せばいいのかということは問題ではなく、完全に元の状態に戻すのが原状回復をするということです。

オフィスであれば、床にカーペットを敷いたり、パーティションで空間を区切ったりしていると思いますが、後付けで設置したものはすべて取り除かなくてはいけません。「この床材はまだ使えるからもったいない」などと思うかもしれませんが、それを決めるのは貸主であって、借りた側ではありません。

貸主が「原状回復して」と言えば、それに従うしかありません。そうなると、次に問題になるのは「誰の負担で」原状回復するのかということです。誰が負担するという部分において、オフィスと住宅で大きな違いがあります。次項ではその違いについて説明します。

オフィスと住宅の原状回復の違い

一般的に住宅の場合は、ほぼ100%貸主負担で原状回復を行います。ところが、オフィスの場合は、ほぼ100%借主負担で原状回復を行います。この違いはどこにあるのでしょう?

住宅の原状回復

住宅の原状回復は貸主負担と紹介しましたが、それにはひとつだけ条件がつきます。それは「日常生活の仕様で発生した傷や汚れに関しては貸主負担」ということです。通常使用を超える範囲で部屋に損傷を与えた場合は、借主負担で直します。

例えば、煙草による壁紙や天井の黄ばみや、家具などをぶつけて凹んでしまった柱などの原状回復は、それを発生させた借主の負担で直さなくてはいけません。

それに加えて、クリーニング費というのも借主負担としているケースがほとんどです。これは契約時に「ハウスクリーニング代は借主負担で」という内容の契約をしているためです。契約している以上はそれを支払わなければいけません。

日常生活の範囲での原状回復が貸主負担になるのは、実際には家賃の中にその費用が含まれているためです。アパートやマンションの場合は、部屋を大改造するわけではありませんので、原状回復にかかる費用というのはある程度推測できます。推定できるなら、それにかかる費用を平均居住月数で割って、その金額を家賃に組み込んでおけば貸主も借主も退去時に嫌な思いをしないで済みます。このため、住宅では一般的に貸主が原状回復費用を負担するというわけです。

オフィスの原状回復

オフィスの原状回復はとても複雑です。入ってくる会社によって、どこまで空間をいじっているのか違います。このため、そのままにして退去されると、原状回復にいくらかかるのか分かりません。そのため賃料に上乗せして請求することもできません。

そうなると、実際に原状回復の工事をして、そこで発生する費用のすべてを借りた側が負担するというスタイルが定着しています。貸す側も決して悪気があってそうしているのではありません。むしろ借りた時の状態から、それほど大きく変えずに使っている人が損をしないための配慮だとも考えられます。

いずれにしてもオフィスの場合には、全てを元に戻さなくてはなりません。その費用は借りた側が全額負担というのが一般的です。

SOHOの原状回復

オフィスの原状回復はすべて自分で負担しなくてはいけませんが、最近流行りのSOHOとなると話は少し変わってきます。マンションの一室などをSOHOとして利用するときには、住宅を借りているのと同じ考えで、貸主負担となることがあります。

例えば、パソコン1台で仕事ができてしまう場合は、マンションの一室に机と椅子しかないというケースも珍しくありません。こういう場合に「オフィスだから借りた側負担で原状回復すべき」というのは少し無理があります。

一般の住宅と同じような使い方をしているのであれば、それは普通に住宅を借りているのと同じことですよね。原状回復に必要な費用は最初から推定できますので、原状回復費用を家賃に組み込んで回収することも難しくありません。

すべてのSOHOがそうだと言うわけではありませんが、一般のオフィスのように、必ずしも自己負担で全部もとに戻さなくてはいけないということはありません。ただし、これはケースバイケースで結果が違います。必要以上に「払う必要はない」と主張しすぎないようにしましょう。きちんと話し合いをして、最適な方法を選んでください。

オフィスの原状回復には「特約」がある

なぜオフィスの場合は、原状回復を借りた側がしなければいけないのか。そのひとつの答えとして、賃料に組み込みにくいということは先ほどすでに説明しました。それでも、理屈の上では住宅と同じようにオフィスでも貸主負担になるはずです。もちろん、貸主負担にならないのには理由があります。

その理由として挙げられるのが「特約」の存在です。オフィスの賃貸契約書には、後付した機器やパーティションなどの撤去などの原状回復を「借りた側の負担で行う」といった文言が含まれています。これが「特約」と呼ばれるものです。

この特約があるため、借りた側が原状回復の費用を負担するということが、オフィスを退去するときの常識になっています。

「特約」が無い場合

それではもし、契約書に特約の記載がなかったらどうなるのでしょう?それでも業界の常識として、借りた側が負担しなくてはいけないのでしょうか?実は特約がない場合は、借りた側に原状回復費用の負担義務はありません。

特約がある場合でも、その特約が無効だと判断されることもあります。契約時に特約に関する説明がきちんと行われなかったとき、その特約は署名をしてあっても、無効にすることができます。実際に説明不足で、負担義務がなくなったというケースもあります。

原状回復で費用を抑えるポイント

オフィスを退去するときに、原状回復費用を負担することを回避することはできませんが、そこで発生する費用を少しでも減らすことはできます。そのためのポイントについてご紹介します。

相見積もりをする

1社だけに依頼をすると、足元を見られてやや高めの見積もりを出してきます。そうなると、相場よりも高い費用が発生してしまいます。それを回避するための方法が相見積りです。複数の業者に見積依頼をすることで、業者同士が価格競争をしてもらえます。

ただし、物件によっては原状回復は貸主の指定業者が行うと決められていることもあります。この場合は、相見積もりをしても無駄になる可能性があります。とはいえ、交渉の余地がまったくないわけではありません。

指定業者が原状回復工事を行う場合は、多くのケースで割高な費用で行うことになります。それを指摘するには、費用が割高であることを証明しなくてはいけません。そのときに他社の見積もりを手にして、相場を知っていれば交渉ではかなり有利な立場に立つことができます。

もし、自分で業者を選べる場合には、「金額だけで選ばない」ということを頭に入れておいてください。安くするための相見積もりですから、金額を重視することも大切ですが、それよりも大切なのは、信頼できる業者かどうかということです。

値段が安いからという理由だけで依頼したら、指示したとおりに原状回復をしてもらえなかったり、壁や柱を傷つけられてしまう可能性もあります。

業者を選ぶときには、まず信頼できるかどうかということを優先してください。 価格というのはその次の段階です。失敗しないためにも質の高い業者に工事をお願いしましょう。

グレードアップした原状回復にしない

原状回復時には、貸主が様々な条件をつけてくることがあります。その中には、もともと使っていたものよりもグレードの高いものを使用して、原状回復してほしいという依頼もあります。これには絶対に応じないようにしましょう。

そのためには、入居時の状態がわかる写真などが必要になりますが、写真がなくても明らかにおかしい依頼だった場合には、はっきりと断りましょう。もしくはグレードアップ分だけでも貸主負担にしてもらってください。

居抜きで売り出せば原状回復は不要

ここまでは原状回復をする前提で話を進めてきましたが、実は原状回復をしないという方法もあります。それが居抜き物件として次の利用者を見つけるという方法です。ここで注意したいのが、居抜き物件で売り出すかどうかの判断はオーナーである貸主がすることです。

借りた側ができることは、居抜き物件にすることを提案し交渉することだけです。例えば、居抜き物件を求めている人を探し出す費用を負担したり、「◯月◯日までに見つからなかったら、原状回復に切り替える」という約束をするなどして、粘り強く交渉してください。

ただし、どんな物件でも居抜きで売り出せるというわけではありません。居抜きで売り出せる物件というのは「自分でも入居したいと思えるほど良い状態であること」です。「こんな状態なら自分は入居しない」というような物件に興味を示してくれる人はいません。

貸主と交渉をする前には、最低限のクリーニングは行っておいてください。オフィスがいつでも次の人が入居できるほどきれいな状態にあれば、原状回復ではなく、居抜き物件での販売に切り替えてくれる可能性があります。

まとめ

オフィスの原状回復について、どこまで原状回復をすべきかについて説明してきました。オフィスと住宅は根本的な考え方が違います。住宅の退去と同じ感覚でいると、びっくりするような金額を請求されて、困ってしまうこともあります。

原則として、オフィスが立ち退くときには、借りた側の負担で借りた時の状態に戻します。そのつもりで予算を確保しておきましょう。また、特約がない場合は、契約上は自分たちが費用を負担する必要はありません。ただし、このケースが最もトラブルになる可能性が高い状態ですので気をつけてください。

オフィスの状態がとてもよく、今すぐにでも入居したいという人が見つかりそうであれば、貸主に対して居抜きとしての売り出しを提案してみましょう。居抜き状態で次の入居者に譲り渡すことができれば、原状回復をさせる必要もありません。そのような方法があるということだけでも覚えておきましょう。

いかがでしたでしょうか。なるべく費用を抑えてリフォームをしたい方へお知らせです。リフォマは中間業者を介さずに、ご要望に合う専門業者を直接ご紹介します。中間マージンが上乗せされないため、管理会社や営業会社などより安く費用を抑えることができます。下記のボタンからお気軽にご相談ください!

リフォマは中間業者を介さずに、ご要望に合う専門業者を直接ご紹介します。中間マージンが上乗せされないため、管理会社や営業会社などより安く費用を抑えることができます。
リフォマなら中間マージンカットで専門業者をすぐ紹介