なぜ大規模修繕を行うのか
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マンションは時間とともに劣化します。コンクリートの寿命は50~100年と言われていますが、50年経過するまで前にひび割れが発生することもあれば、コンクリート以外の部分が劣化することもあるため、定期的な修繕を行わなくてはいけません。
修繕を怠ったマンションは資産価値も落ちてしまいます。自分の資産を守るためにも、修繕は避けて通ることのできない道です。しかし、修繕には数千万~数億円と高額な費用が発生するため、マンションの組合員にいきなりこの金額を求めても支払えない家庭もあります。
このため、マンションでは計画的な修繕積立費を設定しなくてはいけません。この修繕積立費を決めるためには長期修繕計画が必須です。どのタイミングでどのような修繕をするのか選定し、そのためにいくらお金がかかるのかを計算します。
組合員には修繕積立費を支払ってもらっていますが、月々の出費はできるだけ抑えたいはずです。必要な費用だと分かっていても、何のための費用なのか明確にしておきましょう。 誰もが納得できる形で修繕積立費の妥当性を視覚化したものが、長期修繕計画だと考えてください。
この長期修繕計画がきちんと管理されている場合は問題ないのですが、最近は形式だけで中身の見直しがされていないため、修繕を行うときに積立金が不足するということが増えています。不足していた場合は組合員から追加で集金を行ったり、銀行からお金を借りなけれぱいけません。
銀行の返済のために、以降の修繕積立費を値上げしたケースがあります。このような事態になると、組合員の不満が高まってしまいますので、長期修繕計画は定期的に見直ししなくてはいけません。
大規模修繕は12年周期で行うことが一般的
以前は大規模修繕のタイミングとして10年周期というのが一般的でした。ところが最近では12年周期で行われるケースが増えています。
その理由については後ほど詳しく説明しますが、外壁の寿命が10年前後だということが大きく影響しています。外壁は寿命を迎えると、ちょっとした衝撃で剥がれ落ちてしまいます。そうなると通行人がケガをする可能性があります。
他にも屋上の防水やシーリングなど、10~12年くらいで劣化がみられる箇所がいくつもあります。それを踏まえて、国土交通省が12年周期での修繕を推奨しているため、現在は多くのマンションが12年ごとに大規模修繕を行っています。
とはいえ、マンションの全ての設備を12年ごとに修繕するわけではありません。例えばエレベーターは30年が交換のタイミングですので、2回目もしくは3回目の大規模修繕で交換します。このように、次の12年に耐えられない場所だけ修繕するのが一般的です。
その結果、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目の大規模修繕のほうが費用が増えていきます。ただし3回目の修繕ではマンションの設備のほとんどを修繕しますので、4回目には修繕費用は下がることが多いようです。
よくある修繕例としては下記のようなものが挙げられます。
1回目(12年目):外壁塗装・金属部塗装・防水工事
2回目(24年目):1回目の内容+エレベーターの交換・駐車場設備の交換・金物の交換
3回目(36年目):1回目の内容+サッシと玄関扉の交換・手すりの交換・配管設備の交換
エレベーターや駐車場設備の交換は費用が高いため、周期的な修繕ではなく、2回目と3回目の間に行うマンションもあります。
大規模修繕を12年周期で行うときの注意点
注意したいのは3回目(36年目)の修繕です。一般的に長期修繕計画は30年という期間で作成することを推奨されていますので、この3回目の修繕については計画されていないことがあります。この3回目の修繕が最も高額になってしまいますと、積立が億単位で不足するケースがあります。
長期修繕計画の推奨期間が30年になっているのは、修繕周期が10年だった頃の名残りです。12年周期で修繕を行う場合には、36年で計画を立てるようにしましょう。3回目の修繕費が払えないため、マンションを手放なす方もいますので気をつけてください。
大規模修繕の周期の考え方
なぜ大規模修繕は12年周期で行わなければいけないのでしょうか。劣化が目につくというのも理由のひとつですが、もちろんそれだけではありません。なぜ12年周期なのか詳しく説明していきます。
10年ごとの外壁打診調査が義務付けられている
平成20年の法改正で、施工もしくは修繕から10年経過後の外壁全面打診調査が義務付けられました。外壁が崩れないようにするためで、ほとんどのマンションがこれに該当します。ただし3年以内に修繕もしくは調査を行うのであれば、10年ちょうどの調査は不要です。 外壁全面打診調査には足場を組む必要があります。足場を組むにも費用が発生するため、10年目で外壁全面打診調査を行い、12年目で大規模修繕を行うと足場の費用が余計にかかってしまいます。 それならば10年目では調査せずに、12年周期で大規模修繕と一緒に行ったほうが合理的ということで、多くのマンションが12年周期を採用しています。
15年周期にしようという流れも
一方で12年周期というのは、管理会社やリフォーム業界の都合だという意見もあります。周期が短ければ短いほど施工業者は利益を得られます。技術力が向上した結果、各設備の寿命が伸びていますが、周期を伸ばすとリフォーム業界のは収益が減るという理由で12年が定着しているとも言われています。
そのようなこともあり、最近では12年周期ではなく15年周期にしようという流れがあります。さらには東日本大震災以降の人手不足によって、18年周期を提案している団体もあります。12年周期で工事をしたくても、人手不足や資材不足で計画通り工事ができないマンションが近年増えています。
大事なのは最適なタイミングで行うということ
大事なのは、12年や15年といった周期にとらわれるのではなく、最適なタイミングで大規模修繕を行うということです。10年で外壁に大きな亀裂が入ったら、12年を待たずに大規模修繕を行わなければいけません。
12年経過しても、まだまだ劣化が見られないというマンションでは、15年まで先送りするということも可能です。ただし、外壁全面打診調査だけは国で定められていますので、それを考慮する必要があります。また15年に伸ばすのでしたら、これまで以上に日頃のメンテナンスを重視し、外壁の塗装剤なども耐久性のあるものに替えなくてはいけません。
もちろん組合員の同意も得る必要がありますので、現状の計画から変更をするというのは大きな労力がいります。そこまでして12年周期を15年周期に変えようという人はほとんどいないというのが実情です。
もし15年周期に変えたいのであれば、管理組合だけで決めるのではなく、専門家に相談してください。組合員の同意を得るためにも、専門の知識を持った第三者の意見を聞きながら進めていきましょう。
まとめ
マンションの大規模修繕の周期について説明してきましたが、なぜ12年周期が一般的なのか理解できたかと思います。様々な理由と思惑が一致して12年になっているわけですが、必ず長期修繕計画に従って大規模修繕をしなくてはいけないわけではありません。
あくまでも目安であり、実際のマンションの状態に合わせて修繕するようにしてください。12年経ってないからといって外壁のトラブルを放置したりすると、マンションの資産価値が下がってしまいます。
近年は作業者の人手不足が深刻な状態になっています。「いますぐ大規模修繕をしたい」と言っても、すぐに行えないこともあります。特別な理由がない限り不具合は小規模な修繕で対応し、準備には余裕をもって大規模修繕を行うようにしてください。
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