一般的に足場を設置して工事する
マンションの大規模修繕は、共用部分での劣化の補修やエントランスのバリアフリー化など、生活空間の向上を図るために工事を行います。 その中でコンクリート補修、タイル補修、外壁塗装、鉄部塗装、屋上及びベランダの防水塗装、給排水管の補修などは、足場を設置して行われることが多い工事です。
「足場付き工法」は、外壁工事を行う際の一般的な方法として定着しており、足場を設置することで作業員が安全かつ効率的に作業できるというメリットがあります。
その一方で、工事期間中は日当たりや風通しが悪くなり、住空間の快適性が損なわれるなど、居住者のストレスを増大させてしまうことが懸念されます。 足場の組立や解体するにも費用がかかりますし、工事期間が長くなるというデメリットもあります。
足場を設置しないで工事する方法
出典:photoAC
大規模修繕と聞くとほとんどの方は、工事の際に足場を設置するというイメージを持っているのではないでしょうか。
居住者のストレスを軽減したり、工事費用のコストダウンを図るために取り入れられているのが、足場を設置しない「無足場工法」です。 足場付き工法が一般的ではありますが、最近は無足場工法を請け負う業者も徐々に増えてきています。
無足場工法には、「ロープ」と「ゴンドラ」という2種類の方法があります。
いずれの場合もマンションの屋上の形状などにより、ロープやゴンドラを吊り下げるための器具の設置ができないことがあります。
ロープを使用する
作業員がレスキュー隊のようにロープを通したフルハーネスを装着し、屋上から外壁を伝いながら作業箇所に下降して作業を行います。 外壁のひび割れが大きいものや補修箇所が広範囲にわたる場合は、移動範囲が限られるため逆に作業がしにくくなってしまいます。
ゴンドラを使用する
マンションの屋上部分から吊り下げたゴンドラに乗り、上下左右に移動しながら作業を行います。 ロープを使用するよりも安定して作業が行えるため、作業効率が良く補修箇所が広範囲であってもスムーズに作業することができます。
無足場工法のメリット
まずは「無足場工法」のメリットとデメリットについて解説します。メリットとデメリットを踏まえ、無足場工法の特徴を分かりやすく説明していきます。
無足場工法には、主に4つのメリットがあります。
- 狭い箇所での作業や部分的な修繕が可能
- 施工期間が短く、工事費用が抑えられる
- 居住者の防犯面の不安が軽減される
- マンションの景観が保たれる
1.狭い箇所での作業ができる
マンションに限らず、戸建て住宅などの建築物で足場を組む時は、隣接する建物との間に足場を組めるだけの十分なスペースが必要です。 そのため建物と建物の間の距離が狭すぎると、足場を設置できないこともあります。
一般的に足場の設置には、隣接する建物との距離が60cm程度空いていることが理想です。 無足場工法であれば、人が通れる40cm程度のスペースがあれば作業が可能ですので、狭い敷地での作業の場合は無足場工法が適しています。
また、外壁に部分的なひび割れが発生したなど、小規模の修繕に関しては効率的に作業が行えます。 従って、広範囲の修繕を行わない場合は、無足場工法を選択するほうが賢明かもしれません。
2.施工期間が短く、工事費用も安くおさえられる
マンションの規模によって足場の設置及び撤去にかかる期間は異なりますが、大体10~20日ほどといわれています。 無足場工法は、足場の設置や解体の作業が必要ないため施工期間が短縮できるだけでなく、工事費用もおさえることができます。
3.マンションの景観が保たれる
足場付き工法ではマンションの外壁全体に足場を設置し、さらに外壁洗浄時の汚れや塗料などの飛散を防ぐため、飛散防止の養生ネットが張られます。
そのため各戸の日差しや風通しが妨げられるだけでなく、窓からは外の景色も見ることができなくなり、居住空間の快適性が損なわれます。 そして同時に、マンションの景観も損なわれてしまうことは言うまでもありません。
一方、無足場工法は足場とシートを使用しないため、外観に変化がない状態で工事を行うことができます。
4.防犯面の不安が軽減される
足場を設置すると、作業員以外の第三者がそれを利用してベランダに侵入することが懸念されます。業者は「関係者以外立ち入り禁止」の表記などで防犯対策を施してくれますが、修繕期間は3~6ヶ月と長期に渡ります。
その間、居住者は防犯面で不安を抱えることになります。 無足場工法では、足場がないため第三者がベランダに侵入してくる心配がなく、防犯面で期待ができます。
無足場工法のデメリット
無足場工法のメリットだけでなくデメリットもしっかりと把握しておきましょう。 デメリットは以下の4つです。
- マンションの屋上形状、規模により作業ができないことがある
- 修繕箇所の範囲や規模によっては適さない
- 修繕箇所を第三者が確認することができない
- 無足場工法ができる業者が少ない
1.マンションによっては設置できないことがある
無足場工法が行えない可能性があるのは、以下のようなケースです。
・屋上が陸屋根(平面)ではなく三角屋根
・マンションの規模によって対応していない業者がある
冒頭でもご紹介したように無足場工法は、ロープ、もしくはゴンドラを使用して作業を行います。 そのため屋上が平らな陸屋根ではなく、三角屋根など特殊な形状の場合はロープの固定やゴンドラの設置が難しいため、作業できないことがあります。
また業者によっては、13~14階建てのマンションには対応していても、20階以上のタワーマンションには対応していないところもありますので、事前に確認がしておきましょう。
2.修繕箇所が広範囲の場合は適さない
足場付工法では、作業員は足場の上を歩きながら上下階、左右方向へと自由に行き来することができ、資材を運ぶときもスムーズに行えます。
無足場工法の場合は作業員自身が器具を装着、またはゴンドラに乗って作業を行うので移動できる範囲が狭くなり、どうしても作業範囲が限られてしまいます。 ロープの場合は上下移動のみ、ゴンドラは機種によっては左右に移動できるものもありますが、広範囲の移動はできません。
どちらの方法も修繕が終わると、一旦屋上に上がってから次の補修箇所へと降りていく作業を繰り返すため、作業に時間がかかることがあります。 従って、外壁の劣化状態が広範囲に渡っている場合や修繕箇所の数が多いと、作業に手間がかかってしまい決して作業効率が良いとは言えません。
3.修繕箇所を第三者が確認することができない
修繕後の状態を「自分の目で確認したい」という方もいらっしゃると思います。
しかし、無足場工法では居住者など第三者が実際に修繕箇所を確認する、ということができません。
修繕後の状態は作業後の写真を見て確認します。
4.無足場工法ができる業者が少ない
近年、都市部では無足場工法に対応できる業者も少しずつ増えてきているものの、地方ではまだまだ業者数が少ないのが現状です。 足場を組めない状況や予算の都合上、無足場工法を希望していてもできる業者が見つかるとは限りません。
まとめ
無足場工法には、作業員がロープにぶら下がった状態で作業したり、ゴンドラに乗って作業するものと2種類の方法があります。
無足場工法の最大のメリットは、足場の組立および、解体費用がかからないこと、施工範囲が狭ければ期間が短縮できる点です。 そしてマンションの快適性も損なわれないため、居住者のストレスも軽減されます。
しかし、マンションの形状が特殊な場合や劣化状態が激しい場合は作業が行えない、というデメリットもありますので、あらかじめ業者に確認しておくと安心です。 無足場工法を行える業者は、まだまだ少ないというのが現状です。希望する場合は、しっかりと情報収集をしてから適切な業者を選定してください。
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