浄化槽とは何か?
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浄化槽は、汚い水を微生物よってきれいな水へと分解し、川などへ流す装置のことです。
その昔、トイレの排水は汲み取り式でタンク内に溜められていましたが、水洗トイレの普及により現在は下水道で浄化されて川などに戻されます。
ところが、地域によっては下水道が普及しにくいため、平成29年3月31日時点での下水道の普及率は平均で78.3%**で、20%以上の家庭では使用していない状況にあります。
下水道の整備ができていない地域でも、生活排水はもちろん発生します。それらがそのまま川や海に流してしまうと、水質が汚濁してしまいます。下水道が普及していない場所は浄化槽を設置し、生活排水をきれいな状態にしてから排水しています。
まずは、浄化槽についての基礎知識を分かりやすく説明します。
浄化槽の役割
明治時代は下水をそのまま川に流していたため、皇居のお堀のような周囲に水がある場所は汚臭がひどかったそうです。このため、人の便や汚水が主な感染源となるコレラが流行り、多くの死者が出たことで国は1890年に水道法を作りました。
それから10年後、1900年に日本で最初の下水道法が制定されます。
この法律により生活排水の垂れ流しが禁止され、全国に下水処理場が作られていきました。しかし、広い国土のすべてに下水管を張り巡らせることは困難なため、整備できない家庭には浄化槽の設置が義務付けられました。
浄化槽は汚水をフィルターにかけることで、段階的にきれいな水へと戻すことができる設備です。一般的な水質指標のひとつであるBOD(生物化学的酸素要求量)の除去率が90%以上あり、放出するBOD濃度が20mg/L以下になるよう、浄化槽法施行規則で定められています。
材質はFRPなどのプラスチック製のものが多く、内部にろ材や仕切り板などが配置されています。大きさは家庭用ですと乗用車1台分くらいで、地震などの災害にも強いという特長があります。耐用年数は20~30年と言われていますが、30年を超えて使用されている浄化槽が少なくありません。
単独浄化槽について
昭和30年代後半から50年代にかけて水洗トイレの普及に伴い、し尿処理をするための浄化槽が各家庭に整備されるようになりました。このときの浄化槽は単独浄化槽と呼ばれ、下水道が全国各地に広まった現在も使用しているところがあります。
この単独浄化槽はトイレ排水は処理できますが、生活排水の浄化は行っていません。そのため、平成12年に単独浄化槽の原則新設禁止が定められました。
現在一般家庭にある浄化槽のうち、35%は生活排水全般を浄化できる合併処理浄化槽ですが、残りの65%は単独浄化槽といわれています。単独浄化槽では生活排水を河川に垂れ流すことになるため、早急に合併処理浄化槽へ切り替えなくてはいけません。
浄化槽にはサイズがある
1人が1日に使用する水の量が200Lとされていますので、家族の人数が多いほど排水量が増え、タンク容量の大きい浄化槽を用意することになります。
とはいえ、家族の人数が変わるたびに買い替えることはできませんので、タンク容量は「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理 対象人員算定基準」(JIS A 3302-2000)により、延べ面積あたりの処理対象人員が定められていて、それに合わせたサイズを設置します。
延べ面積130㎡(約40坪)以下の住宅:5人槽
延べ面積130㎡(約40坪)を超える住宅:7人槽
2世帯住宅(台所と浴室が2ヶ所以上):10人槽
マンションやアパート、大型施設などはその利用人数に応じて大型浄化槽を設置しなくてはいけません。大きいものですと2000人槽というものもあります。
浄化槽がないこともある
下水道が行き届いていない地域では浄化槽を使用しますが、全国レベルで見ると少数派といえます。下水道設備が普及するのに比例して、浄化槽の数は年々減りつつあります。これまで浄化槽を使っていた家庭でも、壊れたことで下水道に切り替えるというケースが増えています。
浄化槽を使用しなくなると、そのまま家の土地に埋めてしまう方がいます。中古で家を購入したとき、前の住人が浄化槽を埋めたままにしていたので、気づかないまま下水道を使って生活しているということがよくあります。
実家を引き継いだ際も、浄化槽の存在に気づかないということは珍しくありません。解体工事を行うと、地中に埋設物がないのかも調べますので、比較的浅い場所に埋まっている浄化槽が高確率で発見されます。ご自身が使用していなくても、地中に浄化槽が埋まっている可能性を頭に入れておきましょう。
浄化槽は管理が義務づけられている
浄化槽はただ設置すれば終わりではありません。きちんとメンテナンスをしないと、浄化槽内に汚物が溜まっていきます。不衛生な状態が続くだけでなく、フィルターも詰まってしまいますので、下水が流れないというトラブルが発生しやすくなります。
このため、浄化槽は浄化槽法という法律に基づいて、正しく管理することが国により義務付けられています。生活環境を悪化させないためにも、浄化槽の管理は次のことを守らなくてはいけません。
- 4ヶ月に1回以上は保守点検を行う
- 使用開始後3~5ヶ月以内に「設置後等の水質検査」を行う
- 1年に1回の定期検査を受ける
- 浄化槽の電源を切らない
- 浄化槽の機能を妨げるものは流入させない
上記以外にも、守らなければいけないことが細かく定められています。点検や清掃、検査はすべて管理者が行うことになっています。面倒に思うかもしれませんが、管理を放棄していると浄化槽法の規定違反で罰則を受けることになります。
改善措置や使用停止の命令を受けても無視した場合は、6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が課せられます。さらに、行政庁の立ち入り検査を拒んだり、嘘の報告をすると30万円以下の罰金となります。
浄化槽を撤去するときの費用相場
浄化槽のメンテナンスが大変なので下水道に切り替える、もしくは家の解体などで浄化槽を撤去すると、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?撤去を考えている方は気になるところですよね。
5~7人槽:3万~7万円
一般的な家庭の浄化槽撤去にかかる費用の相場は、3万~7万円程度です。この金額は解体工事と一緒に行うと、浄化槽単体で撤去するよりもやや高くなることがあります。さらに、浄化槽の最終清掃が済んでいないと、さらに費用が上がります。
浄化槽の中は汚物が詰まっている状態ですので、そのまま捨てるわけにはいきません。専門の浄化槽清掃業者に依頼して、内部を洗浄した上で撤去します。浄化槽の清掃費用には2万~4万円程度かかりますので、最終清掃が済んでいないと、トータルで10万円くらい必要になると考えておきましょう。
ちなみに、解体工事の途中で地下埋設物として浄化槽が発見されると、追加費用が発生することがほとんどです。地中埋設物に関しては、解体業者が前もって説明してくれるはずですが、浄化槽が埋まっていることを知っているのであれば、見積もり時にきちんと伝えておきましょう。
更地にする方は必ず浄化槽を撤去しましょう。撤去することで解体工事費は上がってしまいますが、埋まったまま放置すると不法投棄として罰せられることもあります。
浄化槽の撤去方法とは
使わなくなった浄化槽は撤去することになりますが、その方法は大きく3つに分けられます。それぞれに特徴がありますので、どのような違いがあるのか見ていきましょう。
全撤去
最もシンプルな撤去方法が全撤去です。浄化槽内の部材や装置、浄化槽本体をすべて取り除きます。手間と時間がかかるため費用は高くなりがちですが、業者によっては上半分だけ解体することもあります。上半分だけの撤去は費用をおさえることができますが、地中にモノが埋まっていることに変わりありません。
いずれ土地を更地にするときは、すべて取り除くことになります。浄化槽はプラスチックなどで作られていますので、放置していても土に還ることもありません。撤去するのであれば全撤去がおすすめです。
埋め戻し
埋め戻しは浄化槽の部材や装置を取り除き、本体を2/3ほど残して地中に埋めてしまう方法です。浄化槽の汲み取り・洗浄を行った後、底に穴を開けて地中に戻します。
全撤去と比べると費用をおさえられるため、埋め戻しで処分する方が多いようですが、土地の売却時には、再度掘り起こして浄化槽を撤去しなければいけません。
使わなくなった浄化槽を取り除くだけの予算がないときなど、一時的な回避方法として考えておいてください。 ちなみに汚物が残った状態で埋め戻を行った場合は、自分の土地であっても不法投棄扱いになってしまいますので、洗浄をした上で埋め戻すことが大切です。
埋め殺し
埋め殺しは埋め戻しに似ていますが、部材や装置を取り除かずにそのままの状態で埋めてしまいます。こちらも浄化槽の中に汚物が残っていると、不法投棄扱いになってしまいます。ただ埋めるだけですのでもっとも費用が安い方法です。
但し、土地を売却する際に撤去しておかないと、後々トラブルになることがあります。地盤沈下の危険性もありますので、土地を手放すときは撤去しておきましょう。
浄化槽の撤去には届出が必要
すでに説明しましたが、浄化槽は法律によって管理されています。このため、どこの家で浄化槽が使用されているのか、国(実際には自治体)が状況を把握しています。
現在、全国に何台の浄化槽があるのか、という情報をきちんと掴んでいますので、廃止するときは届け出を掲出する必要があります。
届け出そのものはそれほど難しくありません。都道府県のホームページや各自治体などに浄化槽使用廃止届出書が用意されていますので、浄化槽を廃止してから30日以内に知事宛てに提出します。
廃止を届け出てないと、浄化槽があるものとみなされて、点検や検査などの案内が届いてしまいます。浄化槽の使用を停止して、下水道に切り替える際は、速やかに届け出ましょう。
浄化槽の撤去では補助金が出ることもある
合併処理浄化槽では、撤去する費用は自己負担ですが、単独浄化槽は全額負担しないで済む方法があります。単独浄化槽は新規の設置は認められていませんが、日本にはまだ多数の単独浄化槽が残っています。
今でも単独浄化槽を使っている家は、汚れた生活排水を垂れ流し続けている状態のため、国は単独浄化槽を合併処理浄化槽に換える、下水道に切り替える際は撤去費用の補助を行っています。
那須塩原市の場合
那須塩原市では下記条件を満たすと、最大10万円の補助金を支給してくれます。
- 公共下水道事業計画区域及び、農業集落排水処理区域以外の地域
- 合併処理浄化槽を住宅に設置、もしくは下水道に接続するために単独浄化槽を撤去
- 未着工
- 市町村民税等に滞納がない
- 補助金は予算の範囲内
ポイントは単独浄化槽の撤去を申請前に行わないことです。浄化槽の撤去だけでなく国や自治体の補助金は、どのようなケースでも未着手であることが重要になります。
すでに撤去工事を始めていると、他の条件を満たしていても補助金は支給されません。計画段階で自治体に相談に行き、手続きに関しては専門の知識が必要になりますので、撤去業者に相談または代理人に申請してもらいましょう。
補助金は国や自治体の予算で行いますので、基本的には年度内に撤去を終えなくてはいけません。さらに、補助金申請者が多くて設定された予算を使い切ってしまうと、支給対象外になってしまいます。できるだけ年度の早い段階で、申請することをおすすめします。
まとめ
現在下水道を使用している家でも、もしかしたら地中に浄化槽が埋まっているかもしれません。
中古で家を買ったときなど、最初から下水道になっていることもあり、浄化槽の存在に気づかないということがあります。家の建て替えや解体工事をする段階で、埋め戻しや埋め殺しされた浄化槽が出てきた場合、追加で費用を請求されると思いますが、できればそれを支払って完全撤去しましょう。
浄化槽の最終清掃が終わっているのであれば、4万~7万円くらいの撤去費用で取り除いてもらえます。 浄化槽単体での撤去すると、数十万円かかることもありますので、家の解体工事と一緒に行うと費用をおさえることにつながります。
家の建て替えであっても、最初から埋まっていることが分かっているのであれば、現地調査のときに業者に伝えて見積もりに追加してもらいましょう。
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