アスベストとは?
出典:photoAC
アスベストは石綿(せきめん・いしわた)とも呼ばれる建設資材のひとつです。
耐熱性や絶縁性、保温性に優れている繊維性けい酸塩鉱物の総称です。鉱物ですが繊維状になっていて、その石綿繊維は直径が0.1~1ミクロンしかありません。
アスベストが建物などに使用され始めたのは明治時代以降です。高い保温性や耐久性などを兼ね備えながらも、価格の安さから奇跡の鉱物と呼ばれており、保温材としての利用が広まっていきました。
アスベストの歴史
耐火性が高いというメリットから、1950年代から1970年代までは耐火被覆材として鉄骨への吹付けが義務付けられていました。
当たり前に使用されてきたアスベストは、2000年代になると健康被害が取りざたされているようになります。アスベストの繊維があまりにも細く軽量であるため、意図せずにアスベストを吸い込んでしまうことがあります。
このアスベストが体内に残ると、中皮腫や肺がんの原因になると言われています。アスベストの恐ろしいところは、それらが発病するまでに平均で40年かかることにあります。このため中皮腫の発症は、2035年にピークを迎えると考えられています。
現在、アスベストは当然使用できませんが、禁止されてからそれほど月日が経過していないため、比較的新しい建物でも注意しなくてはいけません。
アスベストが使われていると知らずに解体すると、周囲に飛散して作業者だけでなく周辺の住民にも被害が及ぶため、除去工事は厳しく管理することが定められています。
アスベストには種類がある
アスベストは下記の6種類に分類され、それぞれの特徴に合わせて使用されています。
- クリソタイル(白石綿)
- クロシドライト(青石綿)
- アモサイト(茶石綿)
- アンソフィライト
- トレモライト
- アクチノライト
日本で主に使用されてきたアスベストは、クリソタイル、クロシドライト、アモサイトの3種類です。世界中ではクリソタイル、クロシドライトとアモサイトが、鉄骨などへの吹き付け用アスベストとして使用されています。
以前はこの3種類だけが規制の対象でしたが、平成20年以降はアンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの3種類も追加で規制の対象となりました。このため、以前アスベストが含まれていないとされる建物でも再調査が必要です。
アスベストが含まれている可能性のある建物
アスベストはとても危険な建設資材ですが、専門家でない限り自分の家で使用されているかどうかは分かりません。使用しているかどうかが線引きできる基準として、築年数が挙げられます。
アスベストは2006年9月から住宅への使用が禁止されています。アスベストそのものはもちろんのこと、アスベストを0.1%以上使用しているものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。
1970年代からアスベストの危険性が注目されていましたので、2006年以前でもアスベストを使用していない建物もありますが、基本的にはこの時期よりも前に建てられた家は含有を疑いましょう。
含まれている場所
アスベストは見えるところに含まれているわけではありません。ここでは、アスベストを含有していることが多い建材の種類と、どこに使用されているのかについてご紹介します。
内装材(壁・天井)
家の内装に使われる石膏ボードやケイ酸カルシウム板、壁紙などにアスベストが含まれている可能性があります。
製造時期:1951~2004年
床材
ビニル床タイルやビニル床シートにアスベストが含まれています。フローリング材や石材などを使用しているときはアスベストの心配はありません。
製造時期:1951~1990年
外装材(外壁・軒天)
窯業系サイディングや建材複合金属系サイディング、ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)などにアスベストが含まれていることがあります。
製造時期:1918~2004年
屋根材
住宅屋根用化粧ストレートや石綿含有ルーフィングにアスベストが使用されています。法的には2004年以降に使用禁止となっていますが、屋根メーカーは1999年以降にアスベストを含んだ屋根材の製造販売を中止しているため、15~20年以上屋根の吹き替えをしていないのであれば調査が必要です。
製造時期:1961~2004年
煙突材・風呂釜排熱管材
セメントで作られた煙突がある場合は、このセメントにアスベストが含まれている可能性があります。風呂釜などを使用している古い家は、風呂釜排熱管も含めてアスベストを使用しているかもしれませんので注意してください。
製造時期:1937~2004年
吹付け材
アスベストは耐火性が高いため、学校などでは吹付け材として使用されているケースが多々あります。一般の住宅で使用されることはほとんどありませんが、鉄筋コンクリート構造や鉄筋構造の建物では耐火被覆材として、使用されていることがあります。
製造時期:~1989年
アスベストの危険性には3つのレベルがある
アスベストはその危険性の高さによって3種類に分類されています。
実際に自分で処理することはありませんが、解体工事の施主としては覚えておきましょう。
危険性レベル1
「発じん性が著しく高い作業」
危険レベル1に分類される作業が、吹付け材の処理です。一般の住宅に使用されることはほとんどありませんが、ビルなどではアスベストとセメントを混合したものを、柱や梁、機械室やボイラー室の天井などに吹き付けてきます。
吹き付け材はアスベストの含有率が60~70%といわれているだけでなく、築年数によって飛散性が高くなることがあるため、一番危険度が高い作業になります。
工事を行う際は労働基準監督署と都道府県庁への届け出が必須です。除去工事は作業場所を隔離し、防じんマスクや保護衣を着用して厳重にばく露対策を行わなくてはいけません。
また、工事現場の周囲にアスベスト除去工事をしている旨の掲示、集塵装置の設置、建材の湿潤化などの対策を行います。
危険性レベル2
「発じん性が高い作業」
発じん性が高い保温材や耐火被覆材、断熱材の除去が危険レベル2に該当します。こちらも一般の住宅で使われているケースは少なく、鉄筋コンクリート構造や鉄筋構造の建物の柱・梁・壁の耐火被覆材、屋根用折板裏断熱材、煙突用断熱材などで使用されています。
除去方法はレベル1と同じですが、労働基準監督署への工事計画届出が不要で、保護具もレベル1よりも簡易的なものが認められています。
危険性レベル3
「発じん性が低い作業」
住宅の解体工事を行う場合の多くが、この危険レベル3の作業になります。アスベストそのものを吹き付けたり、巻きつけたりするのではなく、成形板などの建材に含まれているため、比較的発じん性が低いとされています。
アスベストは屋根材、内装材、外装材、天井や床など、あらゆる場所で使用されていますので、飛散しないように手作業で除去作業を行います。事前調査は必要ですが、届出は特にいりません。 ただし、周囲にアスベストの除去工事を知らせたり、被害が出ないための対策が必須です。
解体工事は必ず専門の業者に依頼する
アスベストの除去は、専門の知識と専用の保護具がないと、作業そのものがとても危険です。
アスベストは除去工事だけでなく、対策の措置や作業記録の作成をすることになるため、非常に高い専門性がなければ対応しきれません。
さらに解体業者が除去作業を行うには以下の3点が義務付けられています。
- 石綿作業主任者の選定
- 作業者への教育
- 特別管理産業廃棄物管理責任者の設置
アスベストの除去工事には許可や免許は必要ありませんが、処理方法が間違ってしまうとご自身だけでなく、近隣に住んでいる方の健康を害してしまいます。必ずアスベスト対策の実績がある専門の業者に依頼しましょう。
業者を選ぶ際のポイント
解体工事を行っている業者であれば、ほとんどのところがアスベスト除去の実績があるはずです。しかし、アスベストの含まれた建材などを山間部などに不法投棄する業者も存在します。
工事費用の安さだけで選ぶと、ずさんな処理をする業者に依頼してしまうかもしれません。工事内容を詳細に説明してくれる、対応が丁寧など信頼できるか解体業者を選ぶようにしましょう。
ちなみにアスベストの処理方法は、廃棄物処理方法で定められ、取り扱いは厳密に決められています。絶対にしていけないことは、ご自身でアスベストやそれを含む建材を燃やすことです。
アスベストは熱を加えると無害化できますが、その温度は1500℃以上です。個人や解体業者ではそのような高温処理はできませんので、廃棄物処理業者に任せてください。
アスベスト除去工事の流れ
アスベストの除去工事は手順に則って行わなくてはいけません。施主として手順どおりに行われているかチェックするためにも、除去工事の大まかな流れを知っておきましょう。
アスベストの有無の確認
解体業者に現調してもらう際に、アスベストの有無を確認します。基本は目視ですが、アスベストが含まれているか詳しく調べるときは成分分析調査を行います。
成分分析の結果、アスベストが含まれていると分かった場合、届け出を掲出して除去工事を行います。 図面などからアスベストが使われていることが分かったときは、成分分析調査を行わずに工事を行うこともあります。
アスベストの除去工事の届け出
アスベストの除去工事は、工事の危険性レベルに合わせて届け出が違います。
危険性レベル1
- 工事計画届
- 建築物解体等作業届
- 特定粉じん排出等作業届書
- 建設リサイクル法の事前届
危険性レベル2
- 建築物解体等作業届
- 特定粉じん排出等作業届書
- 建設リサイクル法の事前届
危険性レベル3
- 提出不要(事前調査は行う)
危険レベル3ではアスベスト除去工事に関する届け出は不要ですが、解体する建物が条件に該当するのですあれば、建設リサイクル法の事前届、建築物解体等作業届を掲出しなくてはいけません。
労働基準監督署に届け出するもの
- 工事計画届:工事開始14日前まで
- 建築物解体等作業届:作業前
都道府県庁に届け出するもの
- 特定粉じん排出等作業届書:工事開始14日前まで
- 建設リサイクル法の事前届:工事開始7日前まで
特定粉じん排出等作業届書は、業者ではなく施主(発注者)に変更されています。
提出を忘れないように、きちんと業者と打ち合わせしておきましょう。
アスベストの処理方法
取り除いたアスベストは飛散しないように袋詰されます。アスベスト成形板は袋詰できませんので、大きなビニール袋やシートで囲います。除去した破片からアスベストが飛散するのを完全に防ぎ、作業に使用した器具の洗浄を行います。
アスベストの処理方法として一般的なのは埋め立て処分です。特にアスベストを含んだ成形板などは、切断や粉砕をすると飛散してしまうので、そのままの形状で埋め立てるほうが安全とされています。
一部の自治体ではアスベストの中間処理を行うこともあります。アスベストは1500℃以上で無害化できると説明しましたが、このような中間処理施設がある場合には、アスベストの無害化を行うことで通常の廃棄物として処分できます。
施主として気をつけていただきたいのは、どの方法を行うにせよ、きちんと処理しているかどうかということです。業者によってはアスベストの処理費用を浮かすために、不法投棄するケースがあります。
工事後に依頼者が確認すること
アスベストの除去工事は解体業者の責任のもと行われますが、施主は問題なく工事が終わったかを確認しなくてはいけません。解体業者が「完了しました」という言葉だけを信じるのではなく、自ら最終チェックをしましょう。
工事が終わった際に施主は次の2点をみてください。
- アスベスト除去現場が清掃されていること
- マニフェストの確認
現場は必ず清掃してあること
簡単にできることとして、アスベストを除去した現場を実際に確認することです。アスベストは目に見えない微細な繊維ですので、目視で残留物を確認することはできませんが、解体時に発生した粉塵が残っているようですと、その中にアスベストが含まれているケースがあります。
アスベストを取り除いたときは、徹底して清掃を行わなくてはいけません。その後に建物の解体工事を行うわけですから、少しでも残っていると飛散することがあるからです。
HEPAフィルター付き真空掃除機や負圧除塵装置などの特注な設備を使って、清掃されていることをチェックしてください。
マニフェストの重要性
アスベストの除去現場を確認したら、次は適切に処分されたことを調べましょう。調べるといっても、ご自身で調査をするわけではなく、施工業者にマニフェストの写しを提出してもらうだけでかまいません。
マニフェストというのは、解体業者が産業廃棄物の運搬や処分を依頼するときに、きちんと処分されているかを記録したものです。解体業者は各処理業者から戻ってくるマニフェストで、アスベストが正しく処分されたのかを確認する義務があります。
このため、最終処分が終わると解体業者の手元にマニフェスト伝票が残っています。業者に「ない」といわれた場合は、不法投棄している可能性があります。不法投棄されてからでは遅いですし、契約する前にマニフェストを提出してもらえるか聞いておきましょう。
アスベストを処理しないとどうなってしまうの?
アスベストが危険なことは理解してもらえていると思いますが、なぜここまで厳重に管理して処理されるのでしょうか?逆に、処理しないとどのようなことが起こるのでしょう?
ずさんなアスベスト処理をすることで、どのような問題が発生するのか見ていきましょう。
アスベストの危険性
アスベストが含まれている建物を、何の対策せずに解体してしまうケースもなくはありません。対策をしなければ費用を安くできるため、業者がそのまま解体してしまうのです。
アスベストは発がん性物質で、なおかつ潜在期間が長いということはすでにご紹介したとおりです。そのためすぐに発病することがなく、30年後、40年後にガンとなって現れることがあります。
また、アスベストはとても微細のため、風に乗って簡単に飛散します。完全に養生をしないとアスベストが建物の周りから広がっていきます。解体工事ですので建物が倒壊するかもしれません。リスクを少しでも減らすためにも、アスベストは適切な処理をする必要があります。
アスベストが見つかった際は、解体する建物のほとんどで使用されているケースがあります。かならず事前に調査を行い、アスベストの使用状況に応じた除去工事の依頼をしてください。
アスベストの除去工事には補助金・助成金がある
アスベストの除去工事は、一般住宅でも数十万円の費用が発生します。
解体工事費も合わせるとかなりの出費になりますよね。このため、解体工事を行わずに空き家のまま放置する方もいます。
国はこの状況を改善するために、アスベストの除去のための補助制度を創設しています。補助金制度を運用しているのは地方自治体や地方公共団体ですので、すべての地域で補助金が出るわけではありませんが、受けられることを知っておきましょう。
補助金の例として、横浜市の「横浜市民間建築物吹付けアスベスト対策事業」をご紹介します。
対象:民間建築物(駐車場なと)
※個人住宅、除去予定の建築物、吹付建材以外の建材は対象外
- 横浜市が調査者を無料で派遣
- 除去や封じ込めを行う場合に、費用の2/3以内(上限300万円)を補助
このケースでは個人の自宅は対象外ですが、同じ神奈川県の相模原市では個人住宅に補助金が支給されます。このように、自治体ごとに条件が違っていますので、まずは解体する住宅のある自治体に問い合わせしてみましょう。
まとめ
アスベストの危険性と、除去工事にともなう注意点について説明してきましたが、いかに危険なものであるかは理解していただけたかと思います。すぐさま健康被害が出るわけではないというのが大変悩ましいところですよね。
工事そのものは解体業者が責任をもって行いますが、施主は何もしなくてもいいというわけではありません。危険度が高いときは施主が届出を掲出することになります。さらに、正しい手順で解体工事を行っているのか、アスベストの処分は適切に行われたかを確認することが大切です。
アスベストは1950年代から1970年代までは、当たり前のように使われていた建材ですので、築年数が古い建物ではかなりの確率で使用されています。他人ごとだと思わずに、正しい知識を身に着けた上で、アスベスト除去工事を専門の業者に依頼しましょう。
いかがでしたでしょうか。なるべく費用を抑えてリフォームをしたい方へお知らせです。リフォマは中間業者を介さずに、ご要望に合う専門業者を直接ご紹介します。中間マージンが上乗せされないため、管理会社や営業会社などより安く費用を抑えることができます。下記のボタンからお気軽にご相談ください!
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