外壁の吹き付け塗装とは?
外壁塗装は数回重ね塗りしますが、最後にきれいな外観に整えるために仕上げの塗装を行います。
その仕上げ工法は大きく分けてふたつあります。ひとつは「ローラー塗装」、そしてもうひとつが「吹き付け塗装」です。
ローラー塗装は、ローラーやハケを使って手作業で塗料を塗っていく作業です。吹き付け塗装に比べ、デザイン性が落ちますが、近隣住民への影響が少ないのが大きなメリットです。住宅街での塗装に適しており、外壁塗装の多くがローラー塗装で行われています。
一方で、吹き付け塗装は、スプレーで塗料を吹き付けることで外壁を塗装していきます。職人の腕が求められますが、ローラー塗装よりも味のある仕上がりやデザインを実現できます。モルタルの壁によく用いられています。
吹き付け塗装に使うスプレーガン
吹き付け作業は、「スプレーガン」と呼ばれる、専用の容器に入れた塗料を外壁に吹き付ける機械を使って行います。
吹き付け塗装では1時間に1000㎡と、ローラー塗装の5倍近い範囲を塗ることができるとされ、作業効率が高いのが特徴です。
スプレーガンには、空気圧を用いて塗料を噴射する「エアレプレーガン」と、塗料そのものの重みを使って噴射する「エアレススプレーガン」の2種類があります。
よく使われているのは「エアレススプレーガン」の方で、美しい仕上がりになりやすく、比較的に安価で手軽に利用できるのが特徴です。
現在あまり主流ではない吹き付け塗装ですが、基本的に費用は安く済み、和風建築にもマッチする重厚感のある仕上がりはローラー塗装にない魅力です。
この記事では、吹き付け塗装のメリットやデメリットをローラー塗装と比較しながら解説していきます。
自宅の壁が吹き付け塗装に向いているかどうか、参考にしてみてください。
吹き付け塗装のメリット
仕上がりが綺麗になる
吹き付け塗装の一番の特徴は仕上がりの良さです。きれいでバリエーションのある仕上がりが魅力的です。
複雑な模様や立体感、重厚感のある雰囲気など、さまざまな工夫ができます。吹き付け塗装で行える模様には、次のようなものがあります。
デザイン性を求めるなら吹き付けタイル
- 1800円/㎡(ウレタン塗料)
骨材などと樹脂を混ぜて外壁に吹きつけ、凹凸模様のパターンをつけ、その上に色を塗って仕上げたものです。
住宅の壁で見かけることが多いかと思います。 数センチ毎の丸や細長い凸凹模様になっています。
メリットは劣化しても上塗りをするだけで性能が復活させられる点。デメリットは、そもそも上塗り材の耐久性が低い点です。
吹き付けだけで仕上げるものは中粒仕上げ、ローラーやコテなどで押さえて仕上げるものは押さえ仕上げといいます。吹き付けの中で最も使われている方法です。
どちらもモルタル外壁のようなデザイン性がやや乏しい外壁の塗装によく用いられています。
ザラザラした質感が特徴のリシン
- 2000円/㎡(ウレタン塗料)
アクリル顔料塗料であるリシンに砂状の骨材を混入して、外壁に吹き付ける外壁塗装です。
コストも安く済みますが、その分耐久性の点では劣ります。
吹き付けタイルに比べてできあがる模様の目が小さいので、シックなデザインや土壁のような仕上がりを希望される方におすすめです。
混ぜ込む骨材のサイズによって凹凸の大きさを変えることができるため、住宅の外観に合わせて選べます。
重厚感のある仕上がりならスタッコ
- 2000円/㎡(ウレタン塗料)
外壁にセメントモルタルや合成樹脂を吹きつけてから、コテで塗り伸ばしたり、ローラーで押さえるなどして、表面を凹凸のある粗面に仕上げる塗装法です。
リシン仕上げと吹付けタイルとの両方の特徴を持ちます。
塗膜が最も厚く、凸凹の自然石を外壁に使ったような見た目になり、重厚感があり、耐久性も高いのがメリットです。
ただ、表面がざらついた仕上がりとなるため、やや汚れがつきやすいのがデメリットとなります。
費用が抑えられる
吹き付け工事は、ローラー塗装に比べ工期が短く済み、人件費の削減につながります。
そのため、ローラー工法よりも工事費が低く抑えられるとされています。
施工場所が狭いところでも作業しやすく、逆に広範囲でも噴射によりスムーズに塗装が可能なのもメリットです。
吹き付けとローラーの価格比較表
吹き付け
ローラー
ウレタン
約1800円/㎡
約2000円/㎡
シリコン
約2000円/㎡
約2500円/㎡
フッ素
約3800円/㎡
4200円/㎡
塗料の種類ごとの特徴やおすすめについては、こちらで詳しく解説しています↓
外壁塗装に使われる塗料の種類とグレードを分かりやすく紹介します
吹き付け工事のデメリット
仕上がりに定評のある吹き付け塗装ですが、デメリットもいくつかあります。
具体的に見ていきましょう。
養生に時間がかかる
吹き付け塗装は勢いよく塗料を噴射するため、駐車場や隣家など、近隣に塗料が飛散し外壁以外に付着する恐れがあります。
そのため、汚れを防ぐための養生を貼るのに時間と手間がかかります。強風の日など作業を見合わせなくてはならないなど、天候条件にも左右されやすいです。
近隣住民への配慮が必須
他の外壁塗装でも周辺への気遣いは必要ですが、吹き付け工法ではより近隣の住宅への配慮が必要です。
サプレッサーという空気を圧縮して塗料を噴射する機械を使う際、人によっては騒音と感じるほどの大きな音がしてしまいます。
また、塗料が飛散し、においが広がってしまう可能性もあります。遮るもののない屋根の塗装は、塗料の飛び散りが激しいので周辺に建物がある場合は避けた方がいい場合が多いです。
職人の腕を見極める必要がある
吹き付け工法は、塗装に技術が必要されます。 職人の腕によっては塗りむらができてしまうこともあります。
工事を依頼する際は、施工実績数や施工事例を見せてもらい、信頼できると思った業者に依頼するようにしましょう。
ローラー工法との比較
では、外壁塗装をローラー塗装でやるメリット、デメリットとはなんでしょうか。
ローラー塗装が現在主流となっている理由をご説明します。
ローラー工法のメリット
- 塗料の無駄が少ない
- 業者によってクオリティの差が少ない
- 周辺地域への影響が薄い
直接塗布するため塗料の飛び散りが少なく、吹き付け工法と比べると塗料の無駄が少ないのが特徴です。
また、吹き付け工法は機械の調整などの技術を要しますが、ローラー工法はそこまで熟練度は必要としないため、どの業者によるクオリティの差は少ないです。
最大の理由として、周辺への配慮も吹き付け塗装ほどは必要ではないため、住宅が密集した地域ではローラー工法の方が選ばれるのが一般的です。
ローラー工法のデメリット
- 細かい部分の塗装には不向き
- デザイン性が劣る
さまざまな形状のローラーがあるとはいえ、細かい部分の塗装には向きません。
また、模様や凹凸をつけにくく、仕上がりが単調になりがちなので、デザイン性は吹き付け塗装には劣るでしょう。
吹き付けとローラー、どっちがいいの?
吹き付け塗装には手塗りにはない魅力がありますが、吹き付け塗装に対応している業者は年々減っているのが現状です。
理由は大きくふたつあります。
ひとつは先ほど述べたように、吹き付け工事は住宅密集地でやるにはデメリットが多いからです。
騒音や塗料の飛散といった周辺への影響が大きく、養生もしっかりしなければなりません。
もうひとつは日本の最近の住宅事情です。
吹き付け工事は、モルタル壁に行われるのが主流でした。吹き付け塗装は、職人の手によって塗られるモルタル壁の質感をよく活かせたからです。
しかし最近は、外壁材の主流がモルタルからサイディングボードに移り変わってきており、ローラー塗装でも仕上がりに差が出ないようになっています。
以上の理由から、どうしても業者の提案としてはローラー塗装を勧めがちになりますし、ローラー塗装を選んでおけば間違いはないというのが結論です。
サイディングとモルタルの特徴についてはこちらをご参考ください↓
外壁サイディングの種類と価格は?メンテナンスやリフォームの注意点を解説
では、どういった場合に吹き付け塗装が向いているのでしょうか。
吹き付け塗装が向いている場合とは
塗装範囲がかなり広い場合
大きな倉庫や周辺に建物が少ない一軒家を塗装したいときは、吹き付け塗装が適しています。
前述したように、吹き付け塗装は手塗りに比べて施工時間が短縮され、コストもおさえられる傾向にあります。
1㎡あたりの単価だと、1000円以下のものから2,000円代後半がメインです。ローラー塗装(手塗り)の場合は、3,000から5,000円が平均の価格帯になるので、塗装範囲が広くなれば広くなるほど、価格は抑えられる傾向にあります。
もちろん使用する塗料の種類などによっても違ってきますが、予算的に手塗りが厳しい場合は、吹き付けを検討してみることも一つの方法です。
仕上がりにこだわりがある場合
吹き付け塗装では、工法ごとに仕上がりのタイプを変えられます。クセのないフラットな仕上がりの手塗りと違って、立体感や重厚感などデザイン性を表現することができます。
また最近では、無塗装サイディングと呼ばれる、塗装が施されていないサイディングボードに、吹き付けで塗装を仕上げる手法も人気です。
化粧サイディングほど一般的ではないため、見た目にオリジナリティが感じられます。
塗装済みのサイディングはタイル調やレンガ調など洋風のデザインが多いため、無塗装サイディングは和風や和モダンの家によく合います。
無塗装サイディングとリシン吹き付けを使用した例
(http://nagakute-studio.com/)
外壁はサイディングを使用したいが、デザインは和風に仕上げたいという方は、ぜひ検討してみてください。
まとめ
大半の業者は、外壁塗装を依頼した場合手塗りを勧めてきます。しかし、環境的に問題がなく、さまざまな理由から吹き付け塗装を譲れないという場合は、やってくれるところがないか、複数の業者に相談してみると良いでしょう。 その際は、いくつかの業者に見積りをとってもらい適正な価格を把握する相見積もりを行うようにしましょう。
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