外壁塗装の足場を作る敷地を隣家から借りることはできませんか?
このたび我が家が築10年目を迎え、そろそろ外壁の塗装を考える時期になってきました。そこで困ったことになっています。我が家は隣との境界線と間隔を空けずに家を建てしまったので、我が家の敷地内だけでは外壁塗装を行うのに必要な足場が組めず、隣との境界線を超えて隣の敷地内に足場を組む必要があるようです。しかし、隣家の方は、この家を建てる時から「家が境界線に近すぎる。外壁の塗装をするのに必要な分の敷地はとっておけ。うちの敷地は貸さない。」と作業していた方に言っていたようです。もしこのまま隣が敷地を貸さないといった場合、無理やり組んでしまっても大丈夫なのでしょうか。業者の方は組んでしまえば問題ないといってはいますが、法的な措置を取られるのではないかと心配です。なので、他に方法があればぜひご享受していただきたいです。
2017-02-01専門家からの回答
外壁塗装を考えているが、家が隣の敷地との境界線に対し間隔が空いておらず、隣の敷地内に外壁塗装のための足場を組まなければならない。
しかし、家を建てる際に隣家の方から、家が境界線に近すぎることを指摘されており、外壁塗装のときに敷地は貸さないと作業員を通して言われているので、外壁塗装のための足場を組むための敷地を貸してもらえない可能性がある。
外壁塗装の業者の方からは、承諾を得ずに足場を組んでしまおうと提案を受けた。
法的な措置を取られる可能性も踏まえて何か良い解決策はないかという質問と解釈いたしました。
難しい内容のご相談ですので、
・隣の敷地内に踏み込まないように外壁塗装のための足場を組む方法
・業者の言うとおりに承諾を得ずに隣の敷地内に外壁塗装のための足場を組んだときの法律問題
・外壁塗装の他に工事回数を減らす方法
回答を上記三点に分けてご説明させていただきます。
まず、狭い敷地内で外壁塗装の足場を隣の敷地に踏み込まないように組む方法として、空中越境させる方法か狭小地用単管足場を使用する方法があります。
実際に現場を見てみないと、確かなことは言えないのですが、空中越境と狭小地用単管足場について説明していきます。
一つ目の空中越境させる方法ですが、足場の一段目を家の敷地内に収まるように組んで、二段目から空中で隣の敷地にはみ出して足場を組む方法になります。
空中越境で足場を組む方法であれば、家の敷地内に収める一段目のスペースも大して必要にはなりませんので、人が通れないほどの狭さでなければ原理上は設置可能です。
しかし、空中といえど隣の境界線を超える足場になりますので、結局は近隣の方へのご挨拶と説明が必要になります。
外壁塗装ですと、多少なりとも塗装の塗料や外壁を洗浄する際の水や汚れなどが飛び散りますので、隣家の庭を汚す可能性がありますのでしっかりと説明しなければなりません。
隣家の方が「空中越境なら…」と敷地に外壁塗装のための足場を組むことを承諾してくれるなら問題ないのですが、お話を聞く限り難しいのではないかと感じております。
二つ目の狭小地用単管足場とは、(極端な話ではありますが)人が通れるほどのスペースがあれば設置できる単管足場を用いたものになります。
しかし、あくまで外壁塗装を行うための足場であって、設置しても人が乗れない足場になると意味がありませんし、足場の安定性や足を置ける床板を置かずに管の上に乗るものになりますので、安全性が損なわれてしまいます。
つまり、安全性や作業面を考えると、最低限の寸法は必要になるということです。
また厚生労働省が定めるガイドライン(足場先行工法のガイドライン)には、足場の作業床が24cmを最低基準と定められていますので、足場の骨格まで計算すると約50cmの敷地的な寸法が必要なります。
費用面でも、狭小地用単管足場を組む場合には追加料金を取られる可能性もあります。
狭小地用単管足場が一つの面のみであれば追加料金を請求されることはあまりないですが、複数面の場合には追加料金を請求されると思って間違いないです。
思いつく範囲で敷地が狭くても設置できる足場をご紹介しましたが、実際に現場を見た業者の方が、「外壁塗装を行うのに必要な足場が組めないので、隣の境界線を超える必要がある」と言っているのであれば、実際のところ難しいのかもしれません。
また、無理に足場を組んだとしても、あくまで外壁塗装のためのものですから作業が目的ですし、少なからず隣の敷地に汚れや塗料を飛ばしてしまう可能性もありますので、外壁塗装用の足場を狭くして行う方法にも限度があるかと思われます。
次に業者の言うとおりに承諾を得ずに隣の敷地内に外壁塗装のための足場を組んだ場合について説明します。
念頭に置いて頂きたいのですが、人付き合い・法律面のどちらを考えても、承諾を得てから外壁塗装を始めることは絶対ということです。
敷地をお借りして足場を組んで外壁塗装を行う以上、借りた敷地が踏み荒らされる可能性や少なからず水や汚れ、塗料が飛び散る可能性がありますので、隣家の方に大変なご迷惑をおかけします。
基本的に隣家の方に承諾を得ずに隣の敷地を借り、外壁塗装のための足場を組むこと自体は法律上、問題ありません。
日本の法律では、外壁塗装の足場を組むために隣地に入るのは不法侵入にはならないのです。
隣家に侵入する場合には許可が絶対的に必要なのですが、隣地に入る場合には許可が絶対に必要なわけではないのです。
ご質問者様は外壁塗装を行うという名目上で隣地を使用したいわけですので、隣家の方は合理的な理由がない限り拒否はできないことと法律上ではなっています。
しかし、敷地使用の承諾を得ずに外壁塗装の足場を組む際に、隣家の方が拒否していた場合には不法侵入になる可能性がございます。
ですので、業者さんがおっしゃる「組んでしまえば問題ない」というのは、「承諾は無いが(拒否されていないが)足場を組むために入った」とするためかと思います。
ご質問者様の場合は、隣家の方に「外壁塗装のときに、敷地は貸さない」と言われてしまっているので、拒否にあたる可能性がございます。
ご質問者様が心配されていた法的な措置を隣家の方に取られた場合、ご質問者様が不利になる可能性が高いです。
話をまとめると、外壁塗装で隣地に足場を組むことは問題ないが、拒否されているので承諾を得るまで敷地を借りることはできないです。
法律問題以前の問題として、業者さんは施工さえ終えてしまえば関係がなくなるのに対し、ご質問者様と隣家の方との関係はその後も続いて行きます。
外壁塗装を行う瞬間に焦点を当てた解決法でなく、今後のご近所付き合いの観点を考え、隣地利用の承諾と説明、ご挨拶を経てから外壁塗装を行うようにしましょう。
最後に、解決策という点からはずれてしまうのですが、外壁塗装の他に足場を組んで塗装するといった工事回数を減らす方法をご紹介します。
外壁塗装ですと、およそ10年ごとの塗装作業が必要になり、その度に外壁塗装の足場が問題になります。
そこでおすすめするのがサイディングです。
サイディングとは外壁素材の一種で、サイディングボードと言われる板状のものを建物の骨格に合わせて貼り付けていくものになります。
サイディングボードのつなぎ目をシーリング剤と言われる、建物の防水性や気密性を保持するために継ぎ目や隙間に使われるもので埋めていきます。
このシーリング材が劣化すると雨水が壁の中に入ってしまい、建物の劣化を加速させてしまうので、定期的にメンテナンスが必要になるのですが、外壁塗装のモルタルに比べ、サイディングのシーリング材メンテナンスは軽作業かつ頻度も少なく済みます。
また、サイディングボードは種類が豊富で、ものによってデザインから機能までが異なります。
例えば、現在主流の窯業系サイディングは、住宅の躯体に釘を打ち付けて固定しますので、比較的メンテナンスが少なく済むものですし、樹脂系のサイディングは雨風に強く、耐久性の面で窯業系サイディングよりもさらにメンテナンスが不要になります。
素材によっては外壁塗装と変わらない頻度でメンテナンスや交換が必要になるサイディングもありますが、耐久性能を見てお選びいただければ良いと思います。
外壁塗装の2倍か3倍程度の費用(家の大きさによって変動しますので、具体的な数字は控えます)になってしまいますが、塗替えや隣家との問題を天秤にかけてお考えください。
ご質問者様の抱える問題は大きなものだと思います。
外壁塗装の足場の問題というよりも、隣家の方との問題であると思いますので、しっかりと話し合っていただき、承諾を得たうえで外壁塗装を行っていただければ幸いです。